社会
「コンビニ感覚の受診やめよう」 医療守る丹波の住民ら
丹波市内の医師らへ向けた年賀状を書く「県立柏原病院の小児科を守る会」のメンバー=丹波市春日町黒井 |
小児救急患者の大半が軽症とされる中、患者側が受診のあり方を見直し、小児科医の負担を軽減しようとする母親たちの活動が丹波市で実を結んでいる。可能な限り「かかりつけ医」で受診し、診察時間外の利用を避けるよう訴えた結果、同市の県立柏原病院では軽症の小児患者が駆け込むケースが激減。緊急性の低い患者側が受診を控える例は全国でも珍しく、医師不足の歯止め策としても期待されている。
(丹波総局・小林良多)
昨年四月、母親らでつくる「県立柏原病院の小児科を守る会」(丹生裕子代表)が、県に医師増員を求める署名活動を始めた。その中で住民へ向けて発したメッセージが、医師らの間で「画期的」と評価を受けた。
「本当に必要な人が利用できるよう、コンビニ感覚での病院受診を控えませんか」
時間外の小児患者の九割は発熱や嘔吐(おうと)など軽症とされる。このため、本来は重症患者のための救急窓口が機能しなくなり、医師への負担も重くなる。背景には、相談相手がいない若い親が慌てて駆け込んだり、共働きで昼間の受診が難しかったりと、社会構造の変化もある。
柏原病院の小児科医が減っていく中、同会は、「かかりつけ医」をつくり積極的に相談する▽緊急度を冷静に判断できる知識を得る-などのメッセージを保護者に発信。地域医療を守るため、住民自身が要望にとどまらず、行動を起こした。
昨年八-十一月、柏原病院の小児救急患者は二百十二人で、前年同期に比べ半分以下に減った。入院した重症者はほぼ同じ人数のため、利用者が緊急性の高い患者に絞られてきていることが分かる。一方で市内の診療所の負担は増えているが、ある開業医は「患者数が増えて大変だが、病院との連携を密にしながら、地域全体で何とか踏ん張っている」と話す。
住民運動の後押しもあり、市は柏原病院に対して医療充実の名目で負担金を投入。昨年十月から神戸大の小児科医が週一日の夜間当直などを務めるようになった。大学医局の強制はなかったが、二十人以上の医師が住民運動への関心もあって手を挙げ、応援に駆けつけている。
当直を務めた三十代の医師は、「軽症患者が少なく手を掛けるべき子どもに力を集中できる。こういう地域で働けたらいいと思う」と感心した様子。患者の顔を見るひまもない小児救急の現状に半ばあきらめもあったという。「住民の理解に支えられている病院があることが希望になる」
同会は医師に感謝の気持ちを伝えることも重視する。「先生、いつもありがとう」。母親から集めたメッセージカードが同病院内に掲示されている。病院や診療所の医師らに年賀状も出した。
昨年十二月、市立病院が小児科の入院を中止している西脇市の母親グループが同会と交流し、意見を交換した。「医師を守ろう」運動の輪が市外へも広がり始めている。
日本小児科学会の藤村正哲副会長は「病院と診療所の使い分けを、住民が自覚できるようになったということ。ぜひ全国に広がってほしい動き」と期待を寄せる。同会の丹生代表は「医療を守る考え方が、母親たちの間で代々引き継がれる地域にしていきたい」としている。
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