北朝鮮の核問題で、今年は、核施設の「廃棄」に入れるかどうかが焦点となるが、北朝鮮が本当に核を放棄する意思があるのかが不透明な中で、腹の探り合いが続いている。韓国・ソウル支局から大滝公成記者が報告。
北朝鮮の核問題をめぐる構図は去年、大きく変化した。舞台が6か国協議からアメリカと北朝鮮の2国間協議に完全に移ったためで、アメリカが方針を転換したことが背景にある。
アメリカは過去5年間、強硬な姿勢で臨んだものの成果を出せず、反発した北朝鮮が核実験に踏み切るという、最悪の結果を招いた。手詰まり感が広がる中で、ライス国務長官を中心とする穏健派が対話路線にかじを切った。米朝が膝(ひざ)を突き合わせて協議した結果、核施設を使えない状態にする「無能力化」の作業が始まるなど、一定の進展が見られた。
しかし、ここにきて、暗雲が立ち込めている。去年中に行うことになっていた「すべての核計画の申告」は約束が果たされず、結局、年を越した。ホワイトハウス・ペリノ報道官は2日、「我々は北朝鮮に疑問を持っている。北朝鮮が申告を行わないとする根拠はないが、期限を守らなかった」と述べた。
北朝鮮が過去に取り出したプルトニウムの量やウラン濃縮計画なども含めるよう求めるアメリカと、より少ない譲歩でテロ支援国家からの指定解除を勝ち取ろうという北朝鮮の間で、折り合いがついていないもよう。立教大学・李鍾元教授は「(北朝鮮は)申告をいくつかの段階に分けて、アメリカにその都度、見返りを要求して、少しずつ進むと思う」と話す。
今年も、アメリカと北朝鮮が綱引きをする構図は変わらないが、最大のポイントは、アメリカが大統領選挙を控えていることだ。ブッシュ政権のうちに、目に見える成果を出したいという思いが強いだけに、残り1年を切り、思い切った妥協をする可能性もある。
そして、もう一つの変化は、韓国で政権交代が行われること。2月に就任する野党・ハンナラ党の李明博次期大統領は、これまでの融和政策を見直す姿勢を示している。対北朝鮮政策立案にかかわった金泰孝教授は「(Q北朝鮮が核放棄に向かわなければ?)最小限の人道的支援は続けるが、今、合意または進められている大規模な南北経済協力事業は、事実上できなくなる」と述べている。
援助の見直しなどをすぐに始めれば、北朝鮮の反発は必至で、南北関係は冷え込むことが予想される。ただし、これは必ずしも状況の悪化を意味しない。
北朝鮮は一方で行き詰まると、別の方向に突破口を求めるというやり口が特徴。それだけに、日米韓がうまく連携した上で対処すれば、北朝鮮から譲歩を引き出せる可能性もある。
交渉の行方は、北朝鮮がブッシュ政権の足元を見ながらギリギリまで突っ張り、「どのタイミングで実を取れば得だと考えるか」にかかっているといえ、今年も北朝鮮のペースで進むことになりそう。
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日テレNEWS24:2008年01月05日03時02分]