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救助ロボットの夢 教科書に

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開発したレスキューロボを前に学生らと語り合う松野さん(左から2人目)(東京都調布市で)

 ◆電気通信大・松野教授、震災死の教え子の遺志を継いで「若者と達成したい」

 阪神大震災で亡くなった神戸大大学院生、競(きそい)基弘さん(当時23歳)の遺志を継いで、レスキューロボット開発に取り組んでいる元指導教官の松野文俊さん(50)(現・電気通信大教授)が、新年度の高校2年向けの英語教科書で取り上げられることになった。松野さんが目指すのは、ロボット救助隊の創設。<メーク・ドリーム・カム・トゥルー>(夢をかなえるために)。教科書では、松野さんの挑戦をそう紹介している。

 「ドラえもんのように人を助け、コミュニケーションができるロボットを作りたいんです」。1994年秋、九州大で開かれた学会で、1年生ながら堂々と研究成果を発表した競さんは、その夜、居酒屋で祝杯を上げながら松野さんに熱っぽく語ったという。

 しかし、翌年1月17日、競さんは神戸市灘区で被災。全壊したアパートの下敷きになった。傍らには、友人から贈られたドラえもんのぬいぐるみがあった。

 「なぜ、彼を救えなかったのか」という悔しさを胸に、松野さんは救助隊員らに聞いて回り、被災後72時間以内に助け出せるかどうかが生死の分かれ目になることを知った。「がれきに埋まった人をロボットが素早く見つければ、死者はもっと減らせるはず」。半年後、松野さんは研究課題を、それまでの宇宙ロボットから、レスキューロボットに変えた。

 2003年、松野さんは狭い場所に入り、赤外線やカメラで負傷者を捜し出すヘビ形ロボットを完成させた。しかし、救助隊の創設までには、まだまだ月日がかかる。「若い世代にも関心を持ってほしい」と考えていた松野さんは、教科書会社「桐原書店」(東京)の掲載の申し入れを快諾。

 教科書では、競さんの死と向き合い、その遺志を実現するために研究に専念する松野さんの姿や、01年の米同時テロでレスキューロボットが活躍したことなどを12ページにわたり紹介。最後に松野さんのメッセージが記されている。

 「基弘さんの夢を胸に、災害でより多くの人々が生き残れるよう懸命に働きたい。そして、多くの若者と一緒に目標を達成したい」

 教科書は、全国の約300校で使われる予定で、名古屋市在住の競さんの父、和巳さん(66)も「息子は生きていれば、ロボットの進歩にびっくりしているでしょう。この教科書をきっかけに若い人たちが少しでもレスキューロボットに興味を持ってくれれば」と話している。

2008年1月4日  読売新聞)

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