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県発注工事汚職・大野病院医療事故:県関連2裁判、今後の展望 /福島

 県発注の木戸ダム工事を巡る佐藤栄佐久前知事(68)らの汚職事件と、帝王切開の手術中に女性(29)が死亡した県立大野病院の医療事故の二つの公判は、ともに証拠調べが終盤を迎え、今夏から秋には1審判決が言い渡される見通しだ。ともに被告が無罪を主張する注目の2裁判を振り返り、展望した。【松本惇】

 ◇前知事汚職--贈賄側2人の証人尋問、土地取引巡り食い違い

 これまで22回の公判で検察側証人の尋問が終わり、弁護側証人の尋問が始まっている。収賄罪に問われた栄佐久被告の直接の関与を証言したのは、坂本晃一・元県土木部長(66)だけ。坂本元部長は00年1月上旬、知事室で栄佐久被告から「木戸ダムは前田(建設工業)が頑張ってるらしいな。何か考えてみたら」と言われたと証言。「知事が業者名を言って驚いた。強い意向を感じた」と話し、前田建設が入札に参加できるよう、参加資格要件を緩和したという。

 一方、わいろとされた土地取引を巡り、贈賄側(時効成立)2人の証言に食い違いが出た。前田建設の寺島一雄・元副会長(75)は「木戸ダムを受注させていただいたお礼」と証言した一方、下請けの水谷建設の水谷功・元会長(62)は「わいろを贈るために土地を買ってくれという話はしたことがなく、悪いことと思わなかった」とわいろ性を否定した。主任弁護人の宗像紀夫氏(元東京地検特捜部長)は「検察の思惑通りに行っていない所がかなりある」と自信をのぞかせる。3月に栄佐久被告と実弟の祐二被告(64)への尋問が予定され、夏ごろに判決を迎える見込み。

 ◇大野病院医療事故--胎盤はく離の中止判断、鑑定医の証言分かれる

 最大の争点は帝王切開手術で、胎盤のはく離を中止し子宮摘出に移るべきだったか否か。

 業務上過失致死と医師法違反の罪に問われた大野病院の産婦人科医、加藤克彦被告(40)は公判で「出血も血圧も脈拍も安定していたので、はく離を中断しようとは思わなかった」と主張した。

 鑑定医の証言は分かれた。検察側鑑定医の新潟大・田中憲一教授は「胎盤を手ではがせなかった時点で子宮を摘出すべきだった」と証言。また、術前の超音波検査から「癒着胎盤を疑ってもいいと思う」と予見可能性も指摘した。

 一方、弁護側は3人に鑑定を依頼。東北大大学院の岡村州博教授は「胎盤をはく離すると子宮が収縮し止血できるので、私の経験でははく離を完了してから止血する」とし、宮崎大の池ノ上克教授も「はく離は早い方がよく、一度始めたら完了する」と、当時の処置の妥当性を指摘した。

 1月25日の第12回公判で証拠調べが終わり、3月に検察側の論告求刑、5月に弁護側の最終弁論が予定されている。

毎日新聞 2008年1月4日

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