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【主張】税財政改革 選挙の具にする愚かさ 増税逃げては将来像結べぬ

2008.1.4 02:47
このニュースのトピックス主張

 日本はすでに少子化による人口減社会に入った。4年後には団塊の世代が年金受給年齢に達し、本格的な高齢化社会を迎える。人口動態が歴史的構造転換期にあるのに、それを支える税財政改革がさっぱり進まない。

 ねじれ国会下で与野党ともまるで身動きが取れず、政策決定プロセスは止まったままだ。将来の活力ある日本を描くべき政治が、逆にそれを阻む矛盾と未熟さをさらけ出している。

 ◆格差の見極めが大事

 安倍晋三前首相は、約束した昨年秋の具体的消費税論議に入る直前に政権を投げ出し、後を受けた福田康夫首相も参院選大敗の重い後遺症に立ちすくむ。そして、永田町の風景は予想される総選挙に向けた民主党との人気取り競争一色に染まる。

 それを来年度予算案は端的に映した。象徴的なのは社会保障と地方対策で、根拠は「格差是正」である。

 今年度補正予算で高齢者医療の負担増凍結を盛り込んだだけでは足りず、過酷な勤務医や医師不足対策を理由に診療報酬を引き上げた。本来は優遇される開業医の報酬を下げて不足分野に回すのが格差是正だろう。

 地方対策もこれに輪をかける。東京など大都市から地方に法人事業税を配分するのに、地方交付税を増やし道路特定財源の一般財源化を有名無実化させた。おまけに農家の自立につながらない所得補填(ほてん)策まで盛り込んだ。

 こうして一昨年の骨太方針で2011年度に黒字化目標を定めた基礎的財政収支は5年ぶりに悪化した。民主党はといえば、明確な財源なき減税や政策を並べたて、福田政権以上の「格差是正」公約を掲げる。財政規律は予算審議次第でさらに緩もう。

 小泉純一郎元首相が構造改革に着手してから7年弱、改革は重大な曲がり角にきた。いや、安倍前政権も骨太方針が示した歳出・歳入一体改革の歳入、つまり消費税論議を封じ込めるために恣意(しい)的ともいえる成長シナリオを描いた経緯がある。

 はっきり言えば、まともに改革が持続したのは小泉政権の5年半だけである。今や、ねじれ国会以前に政府内でも経済財政諮問会議自体が改革の司令塔機能を失ったようにみえる。

 格差は確かにある。そもそも構造改革が悪平等に覆われた“護送船団列島”の沈没を防ぐ手段なのだから、それは当然の帰結ともいえる。大事なのはそれをどう吟味するかなのだ。

 容認できないほど深刻なのか、それとも医師不足のように改革の怠慢がもたらしたものか、はたまた自助努力不足なのか。それを見極めずにすべて「格差是正」で片付けたら、日本は確実に護送船団列島へ逆戻りする。

 欧州連合(EU)諸国を見よ。20年近くも改革を持続し、国内総生産(GDP)比財政赤字3%、債務残高60%という財政安定化基準を達成した今も、改革努力の手を緩めない。大連立で昨年、付加価値税を19%に上げたドイツの例を見るまでもない。

 しかも、50年先までの長期財政推計を行い、未来から現在をチェックしている。本格的な高齢化社会への備えだけでなく、それは持続可能な財政こそ国家の根本という哲学に根差す。

 ◆「赤字時計」を国会に

 日本も先に財政制度等審議会が長期推計を公表したが、政策に反映される気配はない。国債残高だけでGDPを上回り、地方を含めた長期債務残高はその147%に達するのにである。

 それどころか、2011年度黒字化という中期目標さえ危うい。来年度予算で赤字が拡大したうえ、一昨年の骨太が想定した成長の下方修正で税収が伸び悩むからだ。最大の歳出削減を実施しても3・2兆円の増税が必要とした内閣府試算はまだまだ甘く、再度見直しが不可欠だろう。

 社会保障費は医療を中心に急増する。なのに目前に迫る基礎年金の国庫負担割合引き上げ財源の手当てさえできていない。歳出(受益)を緩めて歳入(増税)を考えないなら、破綻(はたん)は時間との競争になる。子供でも分かる理屈だが、与野党は動こうとしない。

 選挙は永遠に続く。いっそ国会に“財政赤字時計”でも設置して危機感を共有したらいかがか。いい加減に政治が消費税のトラウマから脱しないと、日本は将来像を結べない。

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