モノにあふれているが、心は満たされない。そんな日本社会の断面が如実に表れているのが、一極集中の東京だろう。
ファッションにグルメ。話題のショップが次々にオープンし、大量消費社会を体現する。一方、満員電車は超過密社会の縮図だ。人々はヘッドホンで音楽を聴いたり、携帯電話の操作に夢中になり、自分の世界にこもっている。豊かな生活を享受できても、他人にはかかわりたくない。さまざまなひずみを抱えながらも、拡大戦略で突っ走ってきた日本社会の行き着く先という感じがする。
そこで、地方はどう出るか。格差是正といっても、経済では東京に追いつけない。もっと違ったものさしはないか、と考えていて目に留まった書名が『小さな暮らしの「ぜいたく」』(月刊『望星』編)。学者や作家が「真のぜいたく」について論じたもので、これまで多くの日本人が求めてきた「便利さ」「快適さ」重視の生活の在り方に一考を迫る。
和歌山県田辺市在住のタレント、イーデス・ハンソンさんは「モノがありすぎてそれに支配され、自分の生活の焦点が絞りきれないのは幼稚な状態」と指摘し、自分自身の価値観をもつ大切さを強調する。個人の生き方だけでなく、地域の進むべき方向にも当てはまる。ミニ東京でなく、横並びでもない独自の理念に基づく地域づくりだ。
そこで子(ね)年に当たって考えた。地球環境のために、まず大量消費から見直してはどうだろう。自らの暮らしの面でも、「ほどほど」「そこそこ」を今年は心がけたい。
(東京支社・八木一郎)