防衛省が秘匿情報の通信に使うネットワーク情報が記録された外付けハードディスク(HD)が昨年6月、NTTコミュニケーションズ(東京都千代田区)の事務所から盗まれたことが分かった。警視庁が事務所に勤務していた派遣社員の男(32)を逮捕したが、テロの標的になりかねない施設の位置情報も含まれており、情報管理の甘さを露呈した。
事件は昨年6月23日夜、千代田区内幸町の同社事務所で発生。盗まれたのは、NTTコム社の専用線ネットワーク情報が記録されたHDで、防衛省情報も含まれていた。男は数日後、HD1台(5000円相当)を盗んだとして、警視庁捜査3課などに窃盗容疑で逮捕された。
NTTコム社は、官公庁や企業などの顧客に専用線を貸し出し、顧客が指定する複数の地点を中継局を経由しながら結ぶネットワークを提供。防衛省は専用線を、本省と陸・海・空の各自衛隊基地・駐屯地を結ぶ統一的ネットワーク(DII)に利用し、部隊指揮の際にも、暗号化された秘匿情報を伝達しているという。
盗まれたHDにはバックアップ用回線を含め、防衛省など各顧客のネットワークの中継局が入るビルの名前や回線容量などが記録されていた。NTTコムは通常、重要な顧客情報は外付けHDに保存しないが、今回は自社設備の情報と判断していた。
同社広報課は「調査の結果、2次流出はなかった。通常のパソコンではデータの意味を容易には読み取れず、流出しても悪用できないはず」と説明。防衛省も「民間から借りている通信回線が使えなくなっても、自前回線で最低限の通信は可能」とし、中継局変更などの措置を取っていない。
男は「自分用のHDが欲しかった。データは消去した」と供述。昨年9月に東京地裁で懲役1年4月の実刑が言い渡され確定した。過去にも2度、窃盗事件で有罪判決を受けていた。【川上晃弘、佐々木洋、古関俊樹】
▽軍事アナリストの小川和久氏の話 極めて深刻な情報漏えいと言える。2次流出が100%なかったと証明することはできず、最悪の場合は中継局を攻撃されてネットワーク全体がマヒする恐れがあると受け止めるべきだ。防衛省の対応は緊張感に欠けている。
毎日新聞 2008年1月4日 2時30分