リンクの論点はそれはもう大昔から出尽くしていて、同じことが品を替え形を変えて延々繰り返し語られているわけで、わかっている者には今更すぎなのだけど、次々新しい人達は入ってきているわけだから、少しでも新しいパターンを見つけるなりして退屈しない方法で繰り返しているわけだけども、ここへ来てどうやら本当に変革の時期が来たような期待感もあるので、あらためてまとめも書いておくとする。
まず、企業や官公庁などの団体のWebサイトにける無断リンク禁止条項の問題と、個人のWebサイトにおけるそれとは明確に区別することを踏まえないといけない。団体のサイトは、その全てが、明らかに不特定多数の公衆に見てもらうために設置されている。それに対し、個人のサイトは必ずしもそうとは限らない。
団体のサイトの場合を簡単にまとめると、本当は見て欲しいはずなのに、見て欲しくないかのような「リンクポリシー」を掲げてしまう病的構造があり、これをなんとかしたいということだ。IPAセキュリティセンターの事例では、コンテンツを作っている人たちは、「リンクポリシー」を書いた管理部門に怒りを覚えているはずだ。私も勤務先の古いバージョンの恥ずかしい利用規約を変えてもらう交渉をした際に辛い思いをした経験がある。
団体サイトの「リンクポリシー」が変わるべき理由は、「無思慮なサイト運営者が本来言わんとすることを利用規約の形式で書いてみた 改訂版」で暗に表現したつもりだ*1。「第7条」は、「トップページを見て欲しい」という団体サイトの願望が怠慢であることを言っていて、ようするに、「ディープリンク禁止なんて言うな」という運動は、「CSSを活かしてHTMLを書こう」とか、「アクセシビリティに配慮しよう」という運動と同じラインにあり、「どこから見始めても全体を把握しやすいようにサイトをデザインしよう」という運動だ。
しばしば、「そんなにディープリンクして欲しくなければ、機械的にそれを拒否するようにサイトを実装すれば?」という主張が出てくる。これが個人サイトに向けた発言ならば、「無茶言うな」という拒否反応が出てくるわけだが、団体サイトに向けたものとしては、(やろうと思えばできるのだから)その発言の狙いを理解するべきだ。たとえば、IPAセキュリティセンターの事例で本当にディープリンクを機械的に拒否する措置をとったなら、それこそ内部で怒りが爆発するだろうから、一度そうなれば、やっていることと言っていることが違うことを強制的に気づかされるはずだ。
同様のことが新聞社のディープリンク禁止態度についても言える。かつて新聞各社は、記事へのリンクを無条件に禁止するリンクポリシーを掲げていた。もし機械的に拒否する仕組みを導入したらどうなっていただろうか。アクセスは減り、新聞Webサイトの存在意義が目減りし、新聞社もその失策に自動的に気づかされるはずだと言える。本当は記事にリンクされることが新聞サイトにとって欠かせないものになっているのに、ポリシーでは禁止するというのは怠慢にすぎない。怠慢な点は複数ある。1つ目は、本当に禁止したいことが何なのか(たとえば、ライントピックス訴訟のケースのようなリンク様態を禁止したいなど)を、管理部門がきちんと洗い出しするべきところ、その作業を怠って、単純に全部を一律に禁止してしまっていること。2つ目は、個々の記事ページから読み始められることを想定して広告の配置等を工夫するべきところ、それを怠っていること。その他、アクセシビリティ改善を怠っているなどがある。
先にWebを利用してきた者が、後から入ってきた人たちに対して、「郷に入れば郷に従え」的なこと(たとえば、「それがハイパーテキストの優れたところなんだから」など)を言って反発をくらっている様子もよく目にするが、団体サイトに向けてのものであれば、それはつまるところ、「もっとよくできるんだから、ちゃんと努力しようよ」という運動なのだ。
その甲斐あってかどうかはわからないが、朝日新聞は、2005年3月のリニューアルでアクセシビリティに配慮したWebサイト設計の取り組みを実現させており、その結果を踏まえてであろうか、「リンクについて」は、記事へのリンクを認めるものになっている。HTMLを用いたWWWが登場したときから(わかる人には)予感されていた、あるべき姿がようやく実現しつつあるという状況だ。
それでもなお、未開発な、というか、実体と乖離した「リンクポリシー」を恥ずかしげもなく掲げている団体が数多くあり、それは残存しているというだけでなく、新規に登場、ないし、サイトのリニューアルの際に改悪されて登場している様子がある。「会社のポリシーは会議室で決めてない、現場でコピペしてるんだ」の事例に見たように、こういうものは、ウイルスのように伝染する性質がある。これは不幸なことだ。際限なく伝染するものは社会にとって害であるから、少なくとも伝染は阻止したいところではないか。
官公庁は、お手本として真似される立場にあるのだから、率先して改善されるべきところだろう。幸いなことに、中央官庁と都道府県は(一部を除いて)早い時期から比較的問題の少ない「リンクポリシー」になっていたようだ。さすがに頭の良い人が働いているからなのか。
単に「もっとよくできるんだから、ちゃんと努力しようよ」の運動だけであれば、まあ、個々の団体サイトが自己矛盾したポリシーを掲げていても、「放置しておけばいいじゃないか」ということにもなろう。だが、それだけでは済まないケースも現れ始めてきた。それが、栃木県警察の事例だ。一部には、「リンクしているということは、リンク元はリンク先の団体に認められた団体だ」という誤解が生じ始めているらしい。これは、フィッシング詐欺を防止する観点から、そのような誤解をなくしていかねばならず、リンク許諾制は、むしろそれを助長することになるのだから、やめるべきである。安全なWeb利用の観点から、アドレスバーを確認することと、リンクはリンク元にのみ責任があることの理解は、すべてのWeb利用者に最初の一歩として学習してもらうべきものである。
次に、個人サイトの場合はどうか。
個人サイトについても、「もっとよくできるんだから、ちゃんと努力しようよ」ということは言えるわけだが、そうはいっても、全てのページにトップページへのリンクを設けるとか、パンくずリスト的な仕掛けを手で書くというのは、なかなか面倒くさくて、皆がやる気になるものではないのだろう(私はやっていたが)。それが、この数年で、Web 2.0的なWebサイトを自動生成するCMS(コンテンツマネジメントシステム)が、ブログブームによって隅々まで普及したことで、誰にでも簡単に実現できるようになった。
これによって、それを使った人たちは「もっとよくできるんだから」が何だったのかを、体験的に理解することになった。「時代とともに文化が変わったのだ」という言う人がいるけれど、先人達が理想として掲げていたものが、ようやくアーキテクチャとして実現され、普及させることに成功したため、理解が追いついたのだ。
その結果として、団体の方針も変わりつつあるようだ。prima materiaの「「有害サイト等から学校と児童生徒を守る」ことよりも「周りがどうなっているか」の方が大事な仙台市教育委員会」によると、
しかしながら,一般のWebページや公共のWebページにつきましては こうした表示がなされなくなってきたこと,学校情報の積極的提供 などの観点から,仙台市教育委員会といたしましては,「第8条」に ついての見直しを今後検討していきたいと考えております。
とあり、仙台市教育委員会は考えを変える予定らしい。これも、Web 2.0ブームの効用であろうか。今こそ、論点をキチンと整理して、各団体の「リンクポリシー」なるものを一気に適正化する時ではないだろうか。
さて個人サイトの話に戻ると、個人サイトの場合は、必ずしも全部が、不特定多数の公衆に見てもらうために設置しているわけではないのだろう。これは、上に書いたこととは別問題として捉えるべきものだ。
まずひとつは、ローカルコミュニティに固有のマナーの話。これについては、「rikuoの日記」の「昔はリンクするのも大変だった、という話」が自然に表現していると思う。
もうひとつは、表に引っ張り出されたくないという目的で無断リンクを禁止とする話。先に言っておきたいのは、これは「無断リンク」の問題として語る必要がない。「無断紹介」の問題として語ればよいのであり、その方が誤解が少ないので、「無断紹介」という言葉を普及させたい。トップページへのリンクは「無断サイト紹介」、ディープリンクは「無断ページ紹介」といったところか。
で、この話も散々同じことが繰り返し語られているわけだけども、これについては、一昨年から去年にかけて行われた「ised@glocom : 情報社会の倫理と設計についての学際的研究」の中でも議論されている。
倫理研第3回で、「侵食される「私的領域」」と「情報社会における私的領域の確保――公共圏の確立にかわって」というテーマでまず議論があった。リアルでのコミュニケーションの代替としてネットでのコミュニケーションを活用しようとしても、「公的空間と私的空間の溶解という現象」が起きるため、「インターネットにおける公共圏は、すべての私圏を取り込んでいってしまう」ことになる。「インターネットにおける私的空間はなにか」「インターネットにおける私的空間をどう作るのか」という問題提起がなされる。
そしてこれを受けて、次の第4回で、「 アクセス・コントロールによる私的領域の確保は処方箋となるか」というテーマで議論となる。「ネットで私的領域を確保するためにはアクセス・コントロールではだめだ」「「繋がりの社会性」を欲望しているユーザーにとっては、アクセス・コントロールは実はなんの意味もない」という議論だ。
しばしば、「書いた限りは不特定多数が読むのだから、どのような批判も受け入れるべきだ」という主張が出てくるが、じゃあ、リアル世界での立ち話のようなことがネットでは不可能なのか、ということになる。
しばしば、個人サイトが「紹介禁止」(無断リンク禁止)を掲げているところへ、「見られたくないならアクセス制限かけろよ」と言うような人が出てくるが、知り合いにだけしか見せないつもりでやっているわけじゃないのだから、そのような要求は受け入れられないこととなる。彼らのしたいことは、不特定多数には見られたくないが、まだ出会ってない友人とは出会いたいという願望を達成することだ。
これを技術的工夫によってそのような場を提供できないかという話は、過去にも話題になったことがあり、何人かの人がアイデアを書いていたのを見た。今日も、「雑想日記」の「イソターネットもあっていいかも。」にその種のことが書かれている。
mixiなどの現状のSNSのアーキテクチャではその要求を実現できていない。だから、「友達まで」に制限する設定をしないまま、公共の場に相応しくない発言をする輩が後を絶たないわけだ。
何か作りようがあるのではないか、やってみてはどうか、という話は、去年だったか、はてなの近藤さんに話したことがある。
もしそれがうまく実現でき、ネットでの私的空間と公的空間を気持ちよく分けることができたなら、「公共空間ではどのような批判も受け入れるべき」ということは正当な主張となるだろう。そこでは「無断紹介禁止」などあり得ない。
最後に別の話題を。上で紹介した「rikuoの日記」の「昔はリンクするのも大変だった、という話」で、画像ファイルへのリンクはどうなのかという話題がある。これについては、経済産業省の電子商取引等に関する準則平成18年2月版で用語が整理されているので、議論を混乱させないために、この用語を活用していったらいいと思う。
(7)他人のホームページにリンクを張る場合の法律上の問題点
2.説明
(2)リンクの態様についてリンクの態様にも様々な方式があり、本論点中の各用語は、以下の意味を有するものとする。
「サーフェスリンク」とは、他のウェブサイトのトップページに通常の方式で設定されたリンクをいうものとする。なお、本論点において、「通常の方式で設定されたリンク」とは、ユーザーがリンク元に表示されたURLをクリックする等の行為を行うことによってリンク先と接続し、リンク先と接続することによってリンク元との接続が切断される場合のリンクをいうものとする。
「ディープリンク」とは、他のウェブサイトのウェブページのトップページではなく、下の階層のウェブページに通常の方式で設定されたリンクをいうものとする。
「イメージリンク」とは、他のウェブサイト中の特定の画像についてのみ設定されたリンクをいうものとする。
「インラインリンク」とは、ユーザーの操作を介することなく、リンク元のウェブページが立ち上がった時に、自動的にリンク先のウェブサイトの画面又はこれを構成するファイルが当該ユーザーの端末に送信されて、リンク先のウェブサイトがユーザーの端末上に自動表示されるように設定されたリンクをいうものとする。
電子商取引等に関する準則平成18年2月版 p.180
「接続が切断される」など、表現にいまいちなところがあるが、「インラインリンク」は積極的に使っていくのに相応しい用語ではないか。
*1 あれ? そういえば、誰かこれと同じようなものを何年か前に書いてなかった?
prima materia diary - 素通り禁止ルール 私的領域の確保のためにはアクセス・コントロールでは無理、という話題。 そしてこれを受けて、次の第4回で、「 アクセス・コントロールによる私的領域の確保は処方箋となるか」というテーマで議論となる。「ネットで私的領域を確..
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はにっき - 高木浩光氏は何様のつもりなのかを読んで「法律作れよ」との言に反射的に反応しそうになりましたが、ちょっと落ち着いて考えてみることにしました。コメント欄でも「仕組み弱者」という言葉が使われていますが、インターネットが技術者だけのものではない以上、
なんかいろいろ書きたいのですが、その前に。原子力委員会のサイトですが、http://aec.jst.go.jp/jicst/NC/about/link/index.htm (←うちからはリンクしてないよ!、念のため)リンクについて 当原...
無断リンクとかディープリンクを語るときに「インターネット(WWW)はリンクによって成り立っている」とか言う人がいる。それじゃあ何かい?リンクたどってみたら、リンクだらけで、そのリンクたどってもリンクだけ。それだったらリンクによって成り立って...
高木浩光@自宅の日記 / リンクの話 まとめ 個人サイトの場合は、必ずしも全部が、不特定多数の公衆に見てもらうために設置しているわけではないのだろう。 最初にこれを読んだときは、「えー? 不特定多数に見てほしくないんなら、アクセス制限なしの WWW (World Wide Web)..
高木浩光@自宅の日記 / リンクの話 まとめ 個人サイトの場合は、必ずしも全部が、不特定多数の公衆に見てもらうために設置しているわけではないのだろう。 最初にこれを読んだときは、「えー? 不特定多数に見てほしくないんなら、アクセス制限なしの WWW (World Wide Web)
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