中居クンの判断
第58回紅白歌合戦のゲスト審査員を
させていただく。
NHK放送センターには、
午後3時に入った。
まずは、10階の『プロフェッショナル』班
がある社会情報番組の部屋に行き、
有吉伸人さんと合流。
ラジオセンターに向かい、
15時30分から16時15分まで、
ラジオ第一で、古屋和雄さん、
有江活子さんとともに、
「守りたいもの、守るべきもの」に
ついてお話しする。
そのままNHKホールへ。
審査員席に座る。
青木功さん、新垣結衣さん、上田桃子さん、
岡島秀樹さん、陣内智則さん、板東眞理子さん、
中村勘三郎さん、藤原紀香さん、宮崎あおいさん
とご一緒する。
本番中の移動など、段取りについて
説明を受ける。
舞台上では、マッスルミュージカル
の方々によるリハーサルが行われていた。
「舞台転換はすごいことになっていますよ。
舞台の裏は外につながっていて、使い
終わった大道具はどんどん出していって
しまうんですよ」
と有吉さん。
住吉美紀さん、松本和也さんも
着替えに使った
NHKホールの「舞台監督室」
にて、『プロフェッショナル』でも
いつもお世話になっている、
うえだけいこさんにご用意いただいた
衣裳に着替える。
放送センターに戻る。
「ばらえ亭」横の貴賓室に
審査員が揃う。
NHKの橋本元一会長、永井多恵子
副会長がいらして、挨拶される。
有吉伸人さん、山本隆之さん、
河瀬大作さんの「プロフェッショナル班」
の皆さんと立ち話。
「紅白はね、これだけの多くの
歌手を、これだけ短い時間に
出場させると聞くと、外国のテレビ
局の人は、そんなことは不可能だ、
と言うんですよ」
「生で実際に見ると、テレビを
通して見るのの何倍も迫力があって
面白いとのことです。」
と有吉さん。
軽くメイクをしていただき、
胸にコサージュをつける。
NHKホールへ。
ディレクターの方二人が
前説をされている。
審査員全員で、舞台裏に。
本番前。総合司会の住吉美紀さん、
松本和也さんに紹介され、来場の
方々に挨拶し、自分の席に座る。
歌手の方々が両側から入ってきて、
スタンバイ。
19時20分に本番が開始。
白組司会の笑福亭鶴瓶さんが、
審査員紹介のときに「モギー!」
と声をかけてくださる。
歌の合間、舞台のそでで
中居正広さんと話している
とき、鶴瓶師匠が
「茂木さんね、脳の人ですけど、
落ち着きがないですねえ。」
と言われる。
歌を聴きながらリズムをとって
いたのである。
舞台袖に呼ばれてお話した際、
「落ち着きがなくてすみませんねえ」
と鶴瓶さんに言った。
客席を埋めた人々は3000人。
対する、舞台裏で働く人たちは
5000人だという。
紅白合わせて56組の歌手が
出場。
歌と歌のインターバル、そでで
中居さん、鶴瓶さんがつないでいる間、
ステージ上は舞台転換で「戦場」
の趣き。
暗がりの中、
人々がものすごい
スピードで走り回っているのが
見え、感じられる。
怒号が飛び交っているのが
こちらまで聞こえる。
中居さん、鶴瓶さんの前に
位置するフロアディレクターが、
まだ転換が終わっていない間は
両手で引き延ばすような
仕草をして、
「まだまだ喋ってください」
と合図をする。
舞台転換の準備が整うと、
頭の上で両手で「まる」
をつくって進行を促す。
時間が押していて
急いで進めなければならない
ときは、フロアディレクターが
必死になって手をぐるぐる回して
「巻け! 巻け!」と合図する。
カメラは、審査員席の目の前に
少なくとも三台。
フロアに大きなクレーンが少なくとも
一台、
舞台裏手にもクレーンがある。
クレーンを操作する人と、
カメラで撮影する人は違う。
二人の呼吸がぴたりと
合わなければならない。
時折、腰に固定した
ハンディカメラが舞台上
の歌手をなめるように追う。
カメラマンが走り、
ケーブルをまとめながら
移動する役の人が後に続く。
どこでハンディを入れて、
撤収するかは秒単位で決まっている
らしく、
疾走しては駆け寄り、
終わると後ろをふり返らずに
全速力で去る。
クレーンやハンディが被写体に
近づき、それがオンエア上「採用」
されると、赤いランプがつくの
でそれとわかる。
歌手がどこに立つか。その際の
照明がどこからどうあたるか。
光と音のコレオグラフィー。
練りに練られた舞台装置と、
よく訓練されたバックダンサーの
方々や、バンドの奏者たち。
豪華絢爛たるきらびやかな
舞台で
歌手たちが声を限りに歌う。
次からつぎへと繰り出される
超絶技巧と、魂の歌唱と、
息をもつかせぬ展開と、
驚きの趣向。
現実に目の前で起こっている
ことが信じられないような贅沢な
経験であった。
出場歌手の方々は全体を
見ることはできないし、
総合司会の住吉美紀さん、
松本和也さんも全ては見渡せない。
出たり引っ込んだり
忙しい中居さんや鶴瓶師匠も
時々刻々を経験することはできない。
最前列に設えられた
審査員席は、本当に申し訳
ないほど素晴らしい経験が
得られる場所。
有吉さんが「奇跡」
と呼んだパフォーマンスを
目の当たりにして、限りない
感謝の想いが湧き上がった。
「螢の光」を全員で
合唱し、
23時45分、放送が終わる。
音楽がなおもしばらく続き、
中居さん、鶴瓶さんの
挨拶で全てが終わる。
10階の社会情報番組の
部屋に戻り、自分の服に
着替える。
一階の第一食堂での
打ち上げに参加。
出場歌手の方々がマイクの
前に立ち、一人ひとり
挨拶する。
歌手の方々にとっては、
「今年も紅白に出場し、打ち上げに
来ることができた」
というのが、万感胸に迫る思い
なのだろう。
鶴瓶師匠とお話する。
本当に愉快で、素敵な方。
スキマスイッチの常田真太郎さんが、
「グレイテスト・ヒッツ」
のCDを下さる。
爆発するアフロヘアが印象的。
二人で記念撮影をする。
ありがとう! 常田さん!
紅白のディレクターの方とお話する。
途中、2分間押していて、
かなりまずい状態だったのだという。
それでもちゃんと全曲が流れ、
最後に「螢の光」が歌えて
時間通りぴたりと終わる。
それはやはり一つの奇跡としか
言いようがないんじゃないか。
現場で制作にかかわる人の
証言はずしりと胸に響く。
「すごいと思ったのは、中村中さんの
ときなんですよ。
あのとき、2分半押していて、
とにかく巻け、巻けと指示を出しても、
中居さんは顔を横に振って、
言うことを聞かない。
どんなに時間が押していても、
中村さんのエピソードだけは
きちんと話さないといけない、
そんな風に中居クンが判断した
んでしょう。
そして、その中居クンの判断は
正しかったと思います。
あれが、今回の紅白で、一番
しびれた瞬間でした。」
本番が始まる前、有吉伸人さんは、
「何と言っても、石川さゆりさんの
『津軽海峡冬景色』でしょう。さゆり
さんのあの歌が生で聴けるなんて、
すごいことですね。」
と言われていた。
石川さゆりさんは『津軽海峡冬景色』
を歌い終えた後、感極まって
和田アキ子さんのところに行って
泣いた。
奇跡が、大団円を迎え、
美しい光を放った。
Gacktさんの歌は
101スタジオから中継されていたが、
紅白はNHKの総力を
上げた大オペレーション。
5000人のスタッフは、放送
センターの様々な場所に散らばって
待機していた。
関係者の皆様、本当に
お疲れさまでした!
第一食堂での打ち上げも
お開きとなり、
有吉伸人さん、住吉美紀さん、
山本隆之さん(タカさん)
と西口玄関に向かった。
タカさんが、奥様の
大野真弓さんが1月13日に東京オペラシティ
のリサイタルホールで開かれるコンサートの
ちらしを下さった。
スカルラッティ、シューベルトを中心に、
日本人作曲家の作品を散りばめた
充実のプログラム!
http://www.operacity.jp/concert/calendar/index.php?year=2008&month=1&type=list#13
当日会場に行くと、タカさんのにこやかな
笑顔が見られるでしょう!
ボクも、なんとか仕事を終えて
はせ参じます!
『プロフェッショナル 仕事の流儀』
に出演された竹岡広信さんが、
すみきちに「紅白総合司会」
を祝って花を贈ってくださった。
すみきち、大感激!
全てが終わり、NHK近くの
店にて、プロフェッショナル
の4人で静かに新年会をした。
『紅白』は素晴らしいが、
『プロフェッショナル 仕事の流儀』
に関わる者たちも、番組を
素晴らしいものにするために、
がんばっている。
共に闘う者たちの、熱い語り。
午前4時。お店が閉まるので
新年会もお開き。
充たされた想いで家路につきました。
写真でふり返る思い出の数々。
河瀬大作さん、私、有吉伸人さん、山本隆之さん。
「ばらえ亭」前の廊下にて。
審査員紹介の場面
(テレビ画面より。photo by T.T.)
鶴瓶さんと話す。
(テレビ画面より。photo by T.T.)
放送が終わって着替える。お世話になったコサージュ
打ち上げ会場にて
スキマスィッチの常田真太郎さんと
すみきちに花が届いた!
竹岡さんは、やさしい方。
花はタカさんが運びます。何となくメデタイ絵柄!
すでに、日付は変わって明けましておめでとう
ございます。
1月 1, 2008 at 03:52 午後 | Permalink
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» NHK紅白歌合戦 トラックバック へなChoこ
昨日の紅白は面白かった。特に後半。まずGacktの武者ライブにやられた。あれはよかったなあ。もう、新たな世界って感じ。でも、あれでもういいやと思っていたら、どっこい、皆さん魅せますねえ。TOKIOはやはりただ者じゃなかったし、浜崎さんも例年よりも声が出て、氷川きよ..... [続きを読む]
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» 新年は快晴の空に明け トラックバック 銀鏡反応 パンドラの函
@2008年1月1日、都内某所。新しい年は、快晴の空に明けた。
@朝6時に目が醒めた頃は、我が町は今だ暗闇を纏って、まどろんでいた。7時台が近づくにつれ、東の空が次第に明るんできた。漸く明るくなり始めた7時頃に床から這い出て、ベランダの窓をあける。
@西側の空に小さな細長い、葉巻のような影が見えた。おそらく飛行船であろう。空に浮かぶ灰色をしたその葉巻は、暫くすると方向を変えて、西南の方角へと去って行った。東の空がいよいよ明るくなり、元日の太陽が地上に向かって、今年最初の挨拶をしようとしていた。
@そ... [続きを読む]
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♪ごらん、あれが北のはずれ 竜飛岬と ・・・ 風の音が胸をゆする 泣けとばかりに [続きを読む]
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何事にも、それが形になるまでには多くのエネルギーが費やされている。一つの製品が市場に出るまでもそう、一つの技術が世の中に出るときもそうだ。もちろん音楽や絵画などを含め、... [続きを読む]
受信: 2008/01/01 23:58:18
» Screw it トラックバック Tiptree's Zone
If it doesn't feel right, you don't have to do.
Just leave a message on the phone, and tell them to screw it.
After all is said and done, you can't go pleasing everyone.
So screw it.
----誰もがこのように言う社会になれば、ワンダフルで、そして面白い。... [続きを読む]
受信: 2008/01/02 0:39:07
» 『遠江河村荘と河村氏』24 トラックバック 御林守河村家を守る会
本節を概観すると、
河井姓については『人天眼目抄』を初見文書とし、
つぎに『円通松堂禅師語録』に成信戦死の詩偈と初七日經、
また二男宗鏡童子の死を悼む一文があって、
それから約二百五十年後の『当院開基来由扣記』に、
初めて後世に伝わる河井氏観の始源が記され... [続きを読む]
受信: 2008/01/02 7:15:19
コメント
茂木さん、明けましておめでとうございます!
「須磨寺ものがたり」です。
紅白は、残念ながら地元のイベントで見れませんでした。
お疲れ様でした。
それから、相変わらずドジなわたしは、
茂木さんの本のタイトルを間違ってアップし、
再度送り直しました、失礼しました。
今年一年も、茂木さんのさらなるご活躍を、
確信いたしております。
今年も、我々に勇気と、元気と、楽しさを!
よろしくお願いします。
投稿 morien | 2008/01/01 17:07:28
あけまして
おめでとうございます
本年も茂木先生の
ブログ、楽しみに。
学ぶ。
昇華する。
自身を信じつづける先に、未来が何をもたらすか、
楽しみでなりません。
静かにそう思う。
元旦
中居さんの判断にしびれました。
そんなドラマあったのですね。
投稿 美容師 | 2008/01/01 17:24:55
はじめまして。私は中居くんファンでアハ体験ファンでもあるふーすけと申します。紅白審査員お疲れ様でした。
正直、ここのブログを読ませていただいたのは初めてなのです。友人から「紅白の中居君の話出てるよ」と聞いて見にきて読ませていただいたのですが、本当に嬉しいです。紅組は負けてしまったけど、ちゃんと仕事ぶりを見ててくれてる人はいるんだってまるで自分が褒められたように嬉しいです。しかも「世界一受けたい授業」などでいつも真剣にやっているアハ体験の茂木先生に教えていただけるなんて感激です。いいお話ありがとうございました。
投稿 ふーすけ | 2008/01/01 18:20:31
新しい年の到来、おめでとう御座います!
本年度も不束ながら、何卒よろしくお願い申し上げます。
紅白、結局最後まで見てしまいました。出場歌手の熱唱と、息つく間もなきスピーディーな展開、ミラクルともいうべきスペクタキュラーな演出。
それらにぐいぐいと引きこまれて、久しぶりに紅白なるイヴェントを、心から堪能する事が出来ました。
茂木博士の、ネクタイ&コサージュ姿も、なかなかにダンディで御座いました…。
あのような奇跡的なスペクタクルショウは、舞台裏で働く全ての方々の、秒単位の時間との闘いと、それに何としても、この「年に一度の晴れ舞台」を無事大成功のうちに終わらせて見せる!との、一致した鉄の一念がなくては、生まれ得なかったのですね・・。
影の人々の、本当にいいものをつくろうという、汗と血の滲むような奮闘があってこそ、紅白のステージは輝くのですね…!
スキマスイッチの常田さんとのツーショット…無造作自然体天然パーマヘアの茂木さんと、大きなアフロヘアの常田さん。何とも言えない好い組み合わせですね!
スキマスイッチの歌もいい曲でした。
総合司会を終えられたすみきちさん、山本タカさんの笑顔もとても素敵です!
今年が茂木さん、そして皆様にとりまして、幸と実り多き1年でありますように、心からお祈り申し上げます。
投稿 銀鏡反応 | 2008/01/01 18:48:27
こんにちわ
紅白のスタッフ5000人?、少し昔なら、チョットした地方自治体の人数ですね。紅白スタッフ町の人口は日本の人口の0.0036%であった。
茂木さん、住吉さん、審査員、出演者、スタッフの皆さん、ご苦労様でした。(^^)
投稿 初日の出クオリアby片上泰助 | 2008/01/01 20:16:18
はじめまして。
そして、あけましておめでとうございます。
紅白の小林幸子さんを見ていた鶴瓶さんと中井さんの顔が印象に残っています。茂木さんのブログを拝読してテレビでは伝わらない迫力が伝わってきました。
「落ち着きがない」と鶴瓶さんに言われておられていたのは、リズムをとられていた+その場の迫力を間近で感じておられたからなのかな…と思いました。
今年もプロフェッショナルを楽しみにしております。
お体に気をつけて頑張ってください!
投稿 m | 2008/01/01 20:51:17
あけましておめでとうございます
ことしもどうぞよろしくお願いいたします
さて今年は子年。私は年男ですが。
「ねずみの嫁入り」のお話のように
茂木先生をはじめ、みなさまにとってこの一年が
「大きな大きな弧を描く」行き交いと出会いが生まれる
実り多き年でありますように
投稿 風のモバイラー&野村和生 from nomgroove.com | 2008/01/01 20:54:19
本当に今回の紅白は素晴らしかったと思いました。立派に司会をされた中居くんと鶴瓶さん裏方の皆さんお疲れ様です。
大変さを全く感じる事無くと言うのがさりげなく凄い事なのだと思いました。
こんな紅白なら来年も見たいと思います。
投稿 美穂 | 2008/01/01 21:53:32
明けましておめでとうございます。
紅白歌合戦、おつかれさまでした。
住吉さんもきまってましたね。
最初から最後まで紅白を見るのは久々でしたが、
盛りだくさんで楽しい内容でしたね。
あらゆるパフォーマンスの展開の裏には
非常に大勢のスタッフの方々のエネルギーが
ほと走っていたのですね!
驚きです・・・。
一年の締めくくりにこのような素晴らしい番組が見られて
改めて幸せを感じます。
一つの表現をする側の人間の
労力や込める思いに対して、
想像力を働かせることがいかに難しいか
常々、考えさせられることでもあります。
それにしても、歌手の方々のエネルギーは凄いです。
ドリカムの独特のグルーヴ感。
秋川雅史さんの全身全霊の響き。
「千の風になって」を聴いている間、
今は亡き祖父母や若くして逝ってしまった友人のことが
浮かんでいました。
先生は何を想いながら聴いていましたか。
江村哲二さんや河合隼雄先生の魂を
偲ばれていたのでしょうか。
鶴瓶さんの「落ち着きがない」っていう
ナイス突っ込み!可笑しかったです。
茂木先生~、米米の曲でリズムとるんだったら、
座ってなんかいないでいっそのこと立ち上がって
踊ればよかったじゃないですかぁ!
(すみませんっ)
昨年はクオリア日記やご著書等により
多くの大切なことを学ばせていただき、
感謝の気持ちでいっぱいです。
2008年も大変お忙しいかと思いますが、
どうかお体だけはお気をつけください。
更なるご活躍を心よりお祈り申し上げます。
先生の信ずるところ、超ど真ん中に向かって
猛進してください!
投稿 s.kazumi | 2008/01/01 23:00:34