
今年一年の仕事も無事終了したので、いつも通勤で足早に通り過ぎている街道を、のんびりと走ってみました。
ずっと前から気になっていたのですが、自宅と会社のちょうど真ん中辺りにある公園に、巨大な蛸のような形をしたキテレツな建物があります。
調べてみると、これは「タコの山の滑り台」といって北は北海道から南は沖縄まで、全国に150基以上あるという、公園遊具としては比較的ポピュラーなものなんだそうです。(詳しくは
コチラ)

実際に近くで見てみて、いちばん驚いたのは、有機的なフォルムから、てっきりFRP(ガラス繊維入り強化プラスチック)製なのかと思っていたのに、なんと鉄筋コンクリートで出来ていた事。

FRPは、軽くて丈夫なので遊園地の乗り物の外装に多く使われているのですが、雨ざらしになるような場所に放置されると、ガラス繊維がむき出しになって危険なので、それで使用を控えたのでしょうが、それにしても、こんなものを鉄筋コンクリートで作るとなると、途轍もなく高度に洗練された左官技術が必要になります。

日本には明治になるまでドーム型の建物を作る文化がなかったため、球体の壁面を仕上げる技術が育たなかったのですが、そこはそれ、海外の優れた技術をいち早く盗んでしまうのは日本人の得意技、昭和の職人芸恐るべしです。
実はこのタコすべり台というのは、もともとはタコを模したものではなく、イギリス彫刻界の巨匠ヘンリー・ムーアにインスパイアされたゲージツ作品だったのですが、ある人から「タコにした方が子供に喜ばれる。」という提案を受けて、タコになったのだそうです。
更に調べてみると、すぐ近くに、その「タコになる前のタコすべり台」がある事がわかったので、さっそくそっちにも行ってみる事に。
このタイプのすべり台は全国に数基しかなく、遠出しないで見る事が出来たのは本当にラッキーでした。

上の画像がそれなのですが、なるほど、頭の部分がありません。彩色もピンクというかタコ色ではなく、クラインの壺を思わせるような前衛的なアートの雰囲気を醸しています。
しかし、なんだか体操のお兄さんが、体操部に所属していた頃のVTRを見ているような気分は拭えません。
やはり、体操のお兄さんは子どもたちのヒーローだからこそ輝いて見えるのと同様、タコすべり台もタコの頭を被せてこそ、その価値があるのではないでしょうか。
築半世紀になるというプロトタコすべり台は、小さな損傷はあるものの基礎に大きな罅はなく、施工の良さをあらためて確認する事が出来ました。

路傍のお地蔵さまも「着せかえ」を済ませたようで、いよいよもう幾つ寝るとお正月です。