「抜本的な解決へ政策検証」(記者座談会08年展望)

CBニュース記者座談会(08年展望)

 新しい年がまた幕を開けました。2年に1度の診療報酬改定を筆頭に、今年も医療・介護をめぐる動きから目が離せない1年になりそうです。昨年は全国的に医師不足問題が噴出するなど、受けたい時に適切な医療を受けられない「医療崩壊」の危険性が叫ばれました。今年もその対策を模索する1年になるのでしょうか。また、介護についてもコムスン問題で浮き彫りになった課題の対応が求められています。CBニュース編集部では昨年末に続き、2008年の医療・介護業界を展望しました。

A:今年の目玉はやはり診療報酬改定かな?

B:そうだろうね。昨年12月に改定率が決まって、8年ぶりに本体が引き上げられることになったけど、項目ごとにどんな配分になるかはこれからの議論だから。医療現場は最終決定まではやきもきしているんじゃないかな。

C:すでに決定している基本方針では、重点事項として、産科・小児科への手厚い評価や勤務医の負担軽減、また病院と診療所の役割分担などが掲げられているね。ただ本体のプラス改定がされたといっても改定率は0.38%。金額に換算すると約300億円にすぎないから、どうしても少ないパイの奪い合いにならざるをえないよ。

A:やはりカギになるのは開業医の初診・再診料の引き下げ?

C:おそらくは。開業医の収入は勤務医に比べて高いという指摘が多くある。ただ実際は、日本医師会の強い反対があるから、フタを開けてみないとどうなるか分からないよ。厚生労働省は先に初再診料の引き上げをチラつかせることで、医師会との交渉を有利に進めようとしているという見方もあるくらいだから。

B:それからリハビリ医療の見直しについても注目が集まっているよね。

D:リハビリは、前回(06年)の改定で4つの疾患別に分けられ、日数制限まで設けられた。関係者は「過去最悪の改定」と訴えていたけど、全国的な反対もあって、昨年4月に異例の再改定をしたよね。でも、リハビリの実施日数で診療報酬を下げる「逓減制」が導入され、医療機関の減収が明るみになっている。逓減制は今年の改定で撤廃されることが確実だけど、制度を二転三転させているだけで、現場の混乱は増すんじゃないかな。

C:それに加えて、看護師の配置基準の見直しも大きなポイントだろう。06年から、患者7人につき看護職員1人という要件を満たすと高い報酬を得られる「7:1」基準が新設されたけど、厚労省などは「7:1にふさわしくない病院も算定している」と指摘している。今年の改定で、手厚い看護を必要とする患者の割合や、医師の配置なども算定の要件に盛り込むことになるはずだよ。

D:診療報酬とは違って介護報酬改定は来年だけど、介護についても、昨年明らかになった介護保険制度のほころびを修正するために残された宿題がたくさんあるよね。

A:コムスンだけでなく全国で介護事業者の不正が相次いでいることもあって、来年の通常国会には事業所の規制を強化する改正法案が出される見通しみたいだよ。介護報酬改定に向けた議論も今年中に本格化するだろうし。

B:それから2012年度までに削減が決まっている療養病床の受け皿整備も課題だよね。受け皿として、医師や看護師の配置をより厚くした転換型老人保健施設が今年から創設されるけど、実際にどれくらいの法人が転換するからは分からないもの。

A:うーん。療養病床削減の対策もそうだし、診療報酬改定もそうだけど、やはり政府の対策がその場しのぎのように感じてならないのは僕だけかな?

D:いや、実際そうなんじゃないかな。結局、「骨太の方針06」で掲げられている年間2,200億円の社会保障費削減があるかぎり、疲弊する医療・介護現場を根本的に救うことにはならないよ。

C:確かにそうなんだろう。でも残念なことに国民の合意形成が得られない以上、社会保障費の増大という話にはなかなかならないと思うよ。医療現場での暴力や暴言が増えているといったように、患者のモラルの低下も叫ばれているようだし。

D:うん。そうだね。社会保障も税金などで国民が支えているものね。だからこそ、私たち記者が真実を伝え、よりよい医療や介護の方向性を広く一般に提示し続けていく必要があるんだと思う。正しい情報がなければ正しい議論はできないから。これからも、国民にとっても医療・介護従事者にとっても、意味のある情報配信ができるようがんばっていきたいね。


更新:2008/01/01   キャリアブレイン

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