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社会

但馬医療再編、朝来市に波紋 急増する市外搬送

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9月から救急患者の受け入れを事実上停止した梁瀬医療センター(旧公立梁瀬病院)=朝来市山東町

 公立豊岡病院(豊岡市)に医師を集約化する但馬地域の医療再編を受け、朝来市内の救急事情が急速に悪化している。同市山東町の梁瀬医療センター(旧公立梁瀬病院)は、医師数の削減に伴って今年九月から救急患者の受け入れを事実上停止。同市和田山町の和田山医療センター(旧公立和田山病院)だけでは受けきれず、市外への搬送が急増している。姫路市の男性が十七病院から受け入れを断られ死亡した問題を受け、住民の間に「朝来でも搬送が間に合わないケースが出てくるのでは」と不安が広がっている。(社会部・田中伸明)

 「病気の性格上、食道静脈瘤(りゅう)の破裂、胆管炎、腸閉塞にならなければよいが、なるなら梁瀬病院の時間内にと、祈るような気持ちです」

 「八十歳の独居ですので、救急のとき豊岡の方まで行ったら、いろいろと困ります。生活保護を受けていますので、お金もありません」

 十一月、朝来市山東町区長会が実施したアンケート調査には住民二百四十七人が回答。地元の梁瀬センターが救急患者受け入れを制限したことに、不安の声が相次いだ。

 十月に始まった医療再編では、救命救急センター(三次救急)を担う豊岡病院に医師を集約化。それに伴い、梁瀬センターの五人の医師のうち内科医二人を和田山センターに異動。和田山センターから内科医一人が豊岡病院に引き上げられた。

 梁瀬センターではこれまで、外科、内科両方の医師が救急患者に対応し、消化管出血や十二指腸潰(かい)瘍(よう)穿(せん)孔(こう)などへの緊急手術もこなしてきた。昨年九-十一月に朝来市消防本部が同センターに搬送した救急患者は七十人。受け入れを制限した今年九-十一月はわずか二人だった=グラフ。

 一方、和田山センターへの九-十一月の搬送人数は、昨年比で一・七倍の百二十五人に急増。しかし、同センターは整形外科が中心で、消化器の手術などには対応できず、搬送を断るケースも多い。同センターは「梁瀬から二人異動してきたが、退職もあって体制は変わらない。これ以上の受け入れは難しい」とする。

 朝来市消防本部の担当者は「腹痛の患者は以前は梁瀬で対応できたが、現在は市外の八鹿病院にお願いするしかない」。しかし、八鹿も医師不足で受け入れが難しいときがあるといい、「その場合は一時間近くかけて豊岡病院に搬送しているが、途中で不安を訴える患者もいる」と打ち明ける。

 搬送にかかる平均時間も、昨年同時期に比べ急病で五・九分、交通事故で六・五分増えた。

 八鹿、豊岡病院への搬送件数の急増で、「最後のとりで」の両病院の受け入れ態勢への影響を懸念する声もある。

 梁瀬センターの木山佳明院長は「これまでは梁瀬で相当数の救急患者をさばいて、心筋梗(こう)塞(そく)や脳出血の患者だけを八鹿や豊岡に搬送していた。今後、救急患者が直接両病院に集中するようになれば、救急の拠点病院としての機能がまひする恐れもある」と指摘する。

 梁瀬センターは、内科医二人の削減を受け、残った内科医も「体力的に自信がない」として非常勤になり、内科の常勤医は不在に。新規の患者受付は制限せざるを得ない状況だ。

 住民アンケートを実施した藤井宏明・山東町区長会長は強調する。

 「再編で地元の命綱だった梁瀬の医師は実質三人減り、病院機能は著しく低下した。再編でどういう効果があったのか、病院管理者や県はきちんと検証して示すべきだ」

(12/29 10:14)

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