連載
月夜の遠吠え/村田真のマンション管理編集記
部外者がマンションの共用廊下に立ち入ると…
(2007/12/19)
“ついにここまで来たか”というのが、今回の報道を見たときの率直な感想でした。
一昔前、阪神大震災の直後、被災マンションの再建を支援するために、マンションの共用廊下は私有財産だけれども、公共の歩道のように不特定多数の人が立ち入る可能性のある“半公共空間”だから、建て替えの際には容積率を不算入にすべきだ──という意見が高名な学者などから出されたのを覚えています。
それからほぼ3年後、1997年末の建築基準法改正で共同住宅に限って共用廊下と階段の容積率不算入が実現します。ところがその段階では“半公共空間だから”という理由はなぜか消え去り、「共同住宅では従来から容積率不算入としている外部共用廊下や外部階段が一般的なので、公平の見地から建物内部にある共用廊下や階段も同等に扱うべき」という別の理由付けがなされました。
共用廊下を“半公共空間である”といっていた時代もあったことを考えると、今回の判決は随分と遠いところまで来た気がします。
いまや共用廊下は厳重に囲われた私有地扱い。“公共”からはどんどん離れています。
近年の防犯意識の高まり、オートロックや防犯カメラ、インターフォンの普及は、共用廊下も含めてマンションの共用部分のあり方を一変させたようです。
でも……。
「当マンションの敷地は私有地です。区分所有者(居住者)とその関係者以外の立ち入り、通り抜けを禁じます。不審者は発見次第、警察に通報します。○○マンション管理組合」
──といった立て看板をわざわざ大きく掲げているマンションを街中で見かけると、複雑な気分になります。
管理組合の人たちは、きっと防犯に熱心に取り組んでいるのでしょう。しかし外からは、そのマンションが過度に臆病(おくびょう)になっているように見えてしまいます。周辺地域に向かってケンカを売っているように感じる人もいるかもしれません。
一方的に権利を主張するばかりでは、ギスギスして油が切れたような世の中はなかなか変わらないように思うのですが…。
さて、1年間ほぼ毎週休まずに連載してきて、私自身の油もそろそろ切れてきたようです。そこで一念発起、来週からリフレッシュ休暇に入ることにしました。
その間、12月26日、2008年1月9日、1月16日のメルマガ「マンション管理通信」とこのコラム「月夜の遠吠え」は、弊社建設局編集の精鋭たちが代わって発信、執筆します。ご期待ください。
2008年がみなさまにとってよい年となりますよう、お祈り申し上げます。
村田 真=建設局編集委員 |
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