任期満了(1月28日)に伴う駒ケ根市長選は13日告示、20日投票の日程で行われる。これまでに新人2人が立候補を表明。市民グループが新人擁立の方向を決定し、同市長選では52年ぶりの3つどもえとなる公算が大きくなっている。5期・20年にわたって市政のかじ取り役を務めた中原正純市長が引退を表明。市民と行政による協働のまちづくりが叫ばれる中、新たな一歩を踏み出す駒ケ根市の課題を探った。
昨年から懸命な医師探しが行われてきた昭和伊南総合病院。常勤医師の不在による4月からの産科休止に、これまでのところ好転の兆しはない。産科のみならず整形外科、小児科でも常勤医師が減り、同病院のいわゆる総合病院としての機能が損なわれつつある。医師不足は全国的な問題、地方の政治力でどうなるものでもない─と医療関係者は指摘する。が、手をこまねいているわけにもいかない。
同病院は長年、急性期病院として伊南地域の医療を担ってきた。駒ケ根市の新しいリーダーは、同病院を運営する伊南行政組合の長としての責任も担うことになる。組合は総合病院という位置付けから、特色ある自治体病院として存続していけるよう、健診センターを充実したり人工透析センターを設けるなどして再整備をしてきた。
しかし、いま求められているのは市を中心に100人にも上るという出産難民への対応だ。増加している救急の転院搬送についても、「整形外科の手術を伴うようなものは年間何例もない」(千葉茂俊院長)というが、「こんな状態だから伊那中央に指定替えをという話が出るのも無理はない」との声も漏れてくる。
組合は医師確保に向け、県に準じて独自に制度資金を設け昭和伊南への“吸引”を図っているが、応募はない。
病院側も、助産師が自立して健診や保健指導を行う院内産院(院内助産所)の設置を研究しているが、進展は見られない。病院側は「連携強化病院(伊那中央)への医師配置が現在の4人から何人増えるかで、院内産院の見通しが変わる」という。
母親の立場から改善を求めているのが、「安心して安全な出産ができる環境を考える会in駒ケ根」。代表の須田秀穂さんは「この問題は駒ケ根だけの問題ではない。伊那中央病院とは、将来に向けてこの地域の医療がどうあるべきかという大きな構想の下、前向きに連携を取り互いに納得できる医療圏域内の整備を進めてほしい」。
病院関係者に「最も政治力を働かせるのが難しい」と言わしめる医師不足問題。しかし、逆に最も市民生活に密着しているだけに避けては通れない。