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私の医者の選び方(2)

しかし昔の医者はひどかった。あれは小学生のころ、深夜に耐え難い腹痛に襲われた。両親のところに行くと、救急車を呼ぶ?朝まで頑張れる?と聞かれた。何とか耐えると言ったものの症状は悪化する一方である。それで朝の7時に県立病院の救急外来を受診した。

ずっと待たされ続け、やっと登場した外科医と思しき下品な人間は、明らかに寝起きの顔だった。不機嫌そのものだった。そして診察もほどほどに、1分掛かってなかった、「こんなんで来んなよ!」とほざき、後ろも振り返らずに行ってしまった。こういう医者を思い出すにつけ、今の医者叩きは当然である。これまでの患者の恨みが今噴出しているだけだ。

私が医学部に入るまでは、程度の違いはあっても、このような医者に出会うほうが多かった。医学生になってからは先輩に診てもらったから特別扱いだった。しかしその先輩たちが一般の患者にどう接していたかはわからない。

医者になってからも、当然自分が患者の立場になることもあるわけで、勤務する病院を受診すれば特別扱いされるが、そうも行かないことがある。近所の病院、クリニックを受診すると、イライラすることのほうが多かった。無駄な検査の指示、見当違いの問診、それも偉そうに。だから今はまず名刺を出す。すると対応は全く違う。

我が家には友人や親戚から、医療相談の電話がよく掛かってくる。主治医を信頼できないのである。それが当然とも思えるケースに遭遇することも少なくない。たとえば癌。オペしても予後の改善は見込めないのに、外科医はオペに誘導し、その後は専門外の抗がん剤治療を形式的にやっている。

一番ひどかったのは高校時代の親友のことである。彼は東大の理系を卒業し、メーカーに就職して静岡の研究所に勤務していた。急性虫垂炎だったのだが、受診した開業医はエコー(超音波検査)をしたのに見逃し、それよりも症状から典型的ともいえるものだったが放置し続けた。結果として虫垂は破裂して腹膜炎になってしまった。彼はそれで3ヶ月の入院を強いられる破目になった。

彼の医者嫌いは、それ以来筋金入りのものになった。私と飲んでも、この世の害悪は外交官と医者だ!という始末である。それからも医者を受診せざるを得ないのだが、その度に「何で医者というのは論理的じゃないんだ?俺だって理系だから理解できるのに、それを理解出来ないように話してやがる」、と言っている。

歯科医には常に世話になっているが、私は医者には掛からない。それだけ病気をしたことがないとも言えるが、実はそうでもない。インフルエンザなど毎年のように罹患している。しかし何の治療も求めない。どうせ治るからだ。仕事を休みさえもしない。今年はノロウイルスにやられたが、そして下痢がひどくて途中下車を繰り返しながら出勤したが、何の治療も受けていない。

私は外科系の専門医でジェネラリストではなく、一般の病気には門外漢だが、それでも先輩の開業医から代診を求められることがあった。つまらない、どうでもいいような症例のオンパレードだった。だから正直に、ゆっくり休めば治りますと言って、そのまま帰した。しかし先輩は激怒。患者は薬が欲しいのだから出せ!と。ああ薬価差益狙い、金儲け野郎だと感じ、その先輩とは距離を置くようになった。

これからは今までの不摂生がたたり、癌や成人病に悩まされることにもなるだろうが、これまで私が本格的に医者の世話になったのは精神科だった。何回も書いているように小学生のころから鬱感情を知り、中学生でパニック障害を発症し、それでも何とか耐え続け、しかしその限界として30歳で精神科を受診した。

今の私なら大手を振って精神科を受診できる。実際、精神科の同僚に助言を求めている。仲間は皆知っている。近所の精神科クリニックを堂々と受診している。しかしあの頃は抵抗があった。だから精神科医の友人に内緒で相談し、やはり受診すべきだということだったが、私はそれは出来ないと言った。すると自由診療でやっている開業医を紹介してくれた。

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コメント

AA先生
有り難いお言葉に痛み入ります。
私のほうこそ先生に助けていただきました。

ブログを始めて先生と廻りあう幸運を得ましたが、
そのきっかけは先生の寛大なお心でした。
先生の大らかさに私は自分を恥じました。

むしろ愛というか共感から、
心の変革は自ずと促されることを実感しました。
批判のぶつけ合いは何らの変化も起こせない、
ということを痛感しました。

それは先生に身を持って教えていただきました。
心より感謝しております。
また来年も本年同様、お付き合いいただければ、
私にとって嬉しい限りでございます。

先生は来年から、さらなるご活躍、さらなるご多忙が
予想されます。
さらなるご活躍を祈念、応援いたしますと同時に、
くれぐれもご無理の無きようお願いいたします。

来年もよろしくお願い申し上げます。

投稿 星丸 | 2007年12月30日 (日曜日) 01時27分

先生のブログこそが「真実を語って」いますネ!私も薬を出さない内科医をモットーにして日々診療しています。

今年一年、大変お世話になりました(本当です!!)。
勇気付けられたり、感動して涙したり、懐かしい学生時代を回顧したり・・・先生の国と家族を思う姿勢は素晴らしいと思います。

また来年も楽しみにしています。
年末年始、自然治癒力をあまり落とさないように、くれぐれもご自愛下さい。

投稿 Dr.A.A | 2007年12月29日 (土曜日) 07時50分

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