「各地で医療崩壊明るみに」(記者座談会07年回顧)

CBニュース記者座談会(07年回顧)

 年賀状、忘年会、大掃除、仕事納め…。今年もまた慌しく暮れてゆこうとしています。この1年を思い起こしてみると、医療・介護をめぐるさまざまな問題が噴出し、関係者はもちろんのこと、国民の間でも活発な議論が巻き起こった年だったのではないでしょうか。しかし、課題の多くは依然として来年へと積み残されたままです。そこで私たちCBニュース編集部は12月26日に座談会を開催。日々情報を発信している立場として、今年1年の医療・介護にまつわる出来事を振り返りました。

A:今年1年を振り返るに当たって、いろいろな切り口があると思うけど、特に印象が強かったことって何かな?

B:オレは医療機関の倒産件数の多さに驚いたよ。来年の1月に発表される予定の累計では、これまでで最多の値になることがほぼ確実と言われている。

C:確かに驚いたなぁ。「病院が無くなってしまう」なんてちょっと前からすれば考えられなかったことだもの。倒産の原因はやはり医師確保が困難だからかな?

B:そうだね。とにかく日本全国で勤務医が足りない。勤務医がどんどんと病院を去って開業の道を選んでいる。勤務医を辞めてしまう理由として、厚生労働省の過労死認定基準を上回るほどの過重労働で疲弊してしまっていることが考えられるね。

A:医師不足についてはさすがに政府もいろいろと対策を打ったみたいだけど。

B:うん。5月に閣議で決めた「緊急医師確保対策」で、医学部定員を増員することを決めたり、医師不足の深刻な病院に医師を派遣したりしたね。

D:だけど、医学生が一人前の医師として現場に出てくるのに10年はかかるし、他の先進国と比較して絶対数がそもそも14万人足りないという指摘もあるくらいだから、果たして効果があるのかな。小手先の対策と言わざるをえないよ。

B:医師不足のほかに、度重なる診療報酬のマイナス改定が病院経営を圧迫していることも大問題だよ。関係者の「こんな少ない報酬ではやっていけない」という声をよく聞くから。市民にも実感があるみたいで、高知に取材に行ったとき、地元の人から「医療崩壊」なんて言葉が当たり前のように飛び出していた。

A:そういった人たちの声を受けて、診療報酬の本体が8年ぶりにプラス改定になることが決まったようだけど。現場の受け止め方はどんな感じなの?

B:プラスといっても0.38%にすぎず、金額に換算すると300億円あまりでしかない。中小病院は「こちらには回ってこないだろう」と嘆いているよ。

C:大病院と中小病院でいえば、今年1年で、看護師の確保でだいぶ格差が生まれている。昨年から患者7人につき看護職員1人という配置基準を満たすと高い報酬を得られる「7:1」が新設されたことによって、病院による看護師の獲得競争が激しくなっているけど、やはり設備も整い、ブランド力もある大病院に集中する傾向が如実に表れてしまった。

D:介護にとっても大きな年になったよね。介護分野を担当していてどうだった?

A:うん。6月に決定したコムスンの事業所指定更新の不許可を契機に、介護のさまざまな問題が明らかになった。初めは民間会社の福祉領域への参入に対する批判が目立ったけど、介護の現場を見てみたら、どうやら問題の根本はそうじゃなかった。事業者の赤字経営や介護従事者の低待遇にみんなが驚いたよね。

B:介護サービスの値段を決める介護報酬の引き上げは08年4月に前倒ししないの?

A:そういう可能性はあったみたいだけど、厚労省が緊急に作業チームを設置して調査したところ、どうやら介護報酬の設定だけでなく、事業種別や事業者規模などによって、経営の状況はさまざまなことが分かって、十分に検討を重ねた上で09年4月に改定を実施することになったんだ。でも、介護現場で働くなら、コンビニエンスストアで働く方が待遇がいいというくらいだから、本当は早いうちに対策をするべきだと思うけど。

D:うーん。診療報酬と介護報酬の両方に言えることだけど、政府が社会保障費を毎年2,200億円削減すると決定している以上、社会保障関連の予算を引き上げるということにはならないんだね。結局は財源不足が根底にあるということか。


更新:2007/12/31   キャリアブレイン

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