二〇〇七年も押し詰まった。この一年のさまざまな出来事を共同通信社が山陽新聞社など加盟社とまとめた「十大ニュース」を軸に振り返る。
年明け早々、洋菓子チェーン不二家で消費期限切れ原料の使用が発覚したのに続き、北海道土産で有名な「白い恋人」、伊勢名物「赤福」、大阪の高級料亭「船場吉兆」など有名ブランドで次々に食品偽装が明らかになった。訪問介護最大手だったコムスンも不正請求や虚偽申請で事業全面撤退に追い込まれた。
政界でも閣僚の不明朗な事務所費処理が続々判明し、農林水産相だった松岡利勝氏は疑問に答えぬまま自殺した。政治への不信は今も深い。
日本漢字能力検定協会は今年の漢字に「偽」を選んだ。密かに、ゆがんだ手段で自己の利益を図っていた構図があらわになり、社会の各所で信頼が揺らいだ。
格差で参院選惨敗
安倍晋三前首相は昨年暮れに改正教育基本法を成立させるなど、社会に規範を取り戻すことを政権の一つの目標としていた。だが、今年七月の参院選で自民党は惨敗し、参院第一党の座を民主党に明け渡すことになった。
主要な敗因に格差の問題が挙げられる。大都市と地方自治体の税収や財政力の差は大きく、地方から批判の声が上がった。選挙結果は「地方の反乱」と呼ばれた。
正規雇用者と非正規雇用者の給与には大差があり、働いても働いても低い所得しか得られないワーキングプアの問題が今年、クローズアップされた。勝ち組・負け組といういやな言葉も聞かれる。小泉純一郎元首相がリードした改革の負の遺産でもある格差の問題は、あまりにも大きかったと言えよう。
安倍氏は参院選後、内閣を改造して続投したものの、九月に突然辞意を表明した。党総裁選を経て福田康夫首相率いる政権が誕生した。
官庁も揺らいだ
参院選では年金の問題も自民党に強い逆風となった。誰のものか分からない「宙に浮いた」年金記録が約五千万件にも上ることが、二月に表面化した。社会保険庁が記録の入力ミスなどを長年放置してきた結果である。
記録の持ち主を探すために「ねんきん特別便」の発送が十二月中旬から始まったが、記録の照合が最後まできちんとできるのか。国内に怒りと不安が渦巻く。
防衛省では防衛装備品の調達をめぐる汚職事件で、守屋武昌前事務次官とその妻が逮捕された。防衛専門商社に便宜を図った見返りとして、三百八十九万円相当のゴルフ接待などを受けた疑いだ。癒着ぶりにあきれる。
長年癒着を許してきた組織の体質が問われる。イージス艦の情報流出事件もあった。防衛省に改革の課題が突きつけられている。
国政の足元を固めるべき官庁には、今年も頼りがいよりふがいなさが目立った。
政治の役割大だが
参院選の結果、国政では衆参で与野党の勢力が逆転する「ねじれ」が発生した。福田首相と小沢一郎民主党代表の党首会談で大連立構想が浮上したが、民主党側の反対で頓挫した。その後は与野党が相手の出方をうかがってにらみ合いが続いている。
海上自衛隊によるインド洋での給油活動再開のための新テロ対策特別措置法案をめぐり、与党は参院外交防衛委員会で野党が週二日の定例日以外、審議に応じないことを批判する。対する野党側も、参院で可決され、衆院に送付された年金保険料流用禁止法案などの審議に、与党が積極的でないとやり返している。
互いに自分の側の法案成立を言い募り、張り合うばかりで、国会の場で真摯(しんし)な議論が戦わされない状況は国民にとって不幸なことだ。双方のにらみ合いの背景には次期衆院選への思惑も絡む。
薬害C型肝炎訴訟で、原告側が与党の患者救済の法案骨子と和解基本合意書の骨子を受け入れた。法案骨子は症状に応じて患者を一律救済する内容で、訴訟は提訴から五年ぶりに全面解決へ向かう。福田首相の対応が、ここにきて事態の急展開を促したといってよかろう。
物事を動かすために政治の力はやはり大きい。今年各方面で噴出した「ゆがみ」を是正していく上で、政治の役割がますます期待されよう。