【イスラマバード29日共同】パキスタン内務省のチーマ報道官は28日夜、記者会見し、ブット元首相の暗殺について、アフガニスタン国境に近い北西部の部族地域、南ワジリスタン地区の武装勢力を率いるベイトラ・メスード司令官を首謀者として名指しした。しかし司令官側は29日、暗殺への関与を否定。暗殺時の状況に関する政府の説明に、目撃者らからも疑問の声が上がっている。パキスタン選挙管理委員会は29日、来月8日の総選挙の延期を検討する会議を12月31日に開くと発表した。

 チーマ報道官によると、当局は28日朝、メスード司令官と「シャヒブ」と呼ばれる人物の電話を傍受。文書で公開した通信記録によると、司令官は「おめでとう。よくやった。彼女を殺した少年らは勇敢だ」と暗殺成功をたたえた。司令官は国際テロ組織アルカイダやアフガニスタンの反政府武装勢力タリバンと関係が深いとされる。

 これに対し司令官の報道官は29日、ロイター通信に対し「強く否定する。われわれは女性に危害を加えない」と述べた。

 チーマ報道官は、10月のブット氏暗殺未遂にもメスード司令官が関与したとしているが、司令官は関与を否定した。

 ブット氏は車のサンルーフから身を乗り出して支持者に手を振っていた際に暗殺された。報道官によると、男は3発発砲したが、いずれも当たらず自爆、爆風でブット氏の頭部がサンルーフのレバーに強く打ち付けられたのが死因だとしている。報道官は、直前の映像や側頭部に大きな穴の開いたエックス線写真を証拠として公表、「警備は万全だった」と政府の責任を否定している。

 ただ、目撃者や医師の証言と異なっており、地元テレビによると、ブット氏が総裁を務めたパキスタン人民党幹部は「2発が命中したのを党職員が目撃した。発表は根拠がなく、うそだらけだ」と非難した。

=2007/12/30付 西日本新聞朝刊=