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審議なしでも「正当」/「集団自決」修正
文科省「手続き」強調/専門家不在も認める
【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除した高校歴史教科書の検定問題で、県高教組の松田寛委員長、琉球大の高嶋伸欣教授、野党国会議員らが十四日、文部科学省に布村幸彦大臣官房審議官を訪ね、修正撤回を求める約四十二万人分の署名を追加提出した。要請団は教科用図書検定調査審議会(審議会)日本史小委員会で沖縄戦に関する意見が出ず、審議の実態が無かったとの本紙報道を指摘。出席者によると布村審議官は事実関係をおおむね認めたが、「手続きとしては正当に検定が行われた」と問題視しない考えを強調した。
布村審議官は文科省職員の教科書調査官が作成した調査意見書の「集団自決」に関する意見が審議会でそのまま承認されたことや、小委に沖縄戦の専門家がいないことなどを認めた。一方で、審議過程の公開や審議委員との面談要求には「できない」と突っぱねた。
会談後の記者会見で高嶋教授は「(合計五十二万人分の)署名の集まりを伝えたが、反応はさっぱりで門前払い。まるで態度が変わらない」と厳しく批判した。
「調査意見書の作成段階で審議委員の意見が反映されている」とする文科省の従来の主張に、松田委員長は「反映されていない」と指摘。布村審議官は「文書ではなかった」と答えた。
民主党の川内博史衆院議員が「私が文科省の教科書課に確認したところ、ファクスでも電話でもメールでも意見は無かったと認めている」と独自調査で反論すると、黙って聞いていたという。
文科省は従来、軍強制の記述削除の理由を「すべての集団自決に軍の強制があったと誤解されるおそれがある」などと説明してきた。
要請団は修正前の清水書院の「なかには日本軍に集団自決を強制された人もいた」との記述を例に挙げ、文科省見解に疑問を呈したが、布村審議官は「すべての集団自決に軍の強制があったと読み取る高校生が出てくる可能性がある」と説明。
出席者は「問題のすりかえだ」「高校生の読解力をばかにした暴言」などと厳しく批判した。
集まった署名の累計は五十二万七千二百十七人分。要請団は国会内で横路孝弘衆院副議長、江田五月参院議長ら五人に合計一万人分を提出した。要請には社民党の照屋寛徳衆院議員、山内徳信参院議員らも同行した。
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教育者800人 撤回要求/全国集会で連帯確認
【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を文科省が削除した高校歴史教科書の検定問題で、全国の教育関係者らでつくる「フォーラム平和・人権・環境」は十四日夜、「沖縄戦の歴史歪曲を許さない!全国集会」を都内で開いた。国会議員や出版、教育関係者ら約八百人(主催者発表)が参加し、同検定意見の撤回を求めるアピール文を採択した。参加者らは記述の回復などを目指し、二十九日の「教科書検定意見撤回を求める県民大会」に積極的に参加するほか、全国各地でも連帯して取り組む方針を確認した。
元小学校教諭の神本美恵子参院議員(民主)は「(安倍内閣は)美しい国をつくると言いながら、彼らにとって憎い事実を歪曲しようとしている。(歴史的事実について沖縄に配慮する)『沖縄条項』を(検定基準に)入れさせ、二度と『歪曲』させないように皆と一緒に戦う」と強調した。
照屋寛徳衆院議員(社民)も「政治がかく乱して教科書から真実を消そうとしたことを絶対に認めるわけにはいかない」と厳しく非難した。
高嶋伸欣琉大教授は、十二月とされる、生徒配布用の「供給本」印刷の前に「正誤訂正」の手続きで記述回復を目指す方針を説明。その上で「事実をゆがめたことは見過ごせないと(記述の回復を)言うだけでなく、(全自治体の意見書可決や県民大会を開くなどの)沖縄の取り組みを教科書に(書き込んで)反映させるところまで実現させたい」と意気込んだ。
「県民大会」に連動した集会が東京、横浜でそれぞれ二十七、二十九日に開かれる。「大江・岩波沖縄戦裁判を支援し沖縄の真実を広める首都圏の会」は二十七日午後六時半から、文京区民センターで「9・29沖縄県民大会プレ集会」を開催。「教科書・市民フォーラム」は二十九日午後二時から横浜市技能文化会館で総会を開く。同検定をテーマにした記念講演が予定されている。
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