2007年は役者としても大変ご活躍されました。上杉謙信という人物を演じることで一番伝えたかったこととはなんでしょうか。 |
大河への出演オファーがあったとき、最初は悩んだんだ。スケジュール的に厳しかったこともあったし、なにより僕に上杉謙信という人物が演じきれるだろうか、って。だけど、それでも受けようと決めたのは、上杉謙信という人物に日本人の根源を感じていたからなんだ。現代人が忘れてしまっている日本人の精神を彼を通して表現していきたい。ミュージシャンとか役者ということではなく、“表現者”として自分は存在していると僕は思っているから。もうひとつは、大河ドラマは世界の約100の国や地域で放送されていて、世界で一番見られている日本のドラマなんだ。だから一人のアジア人として、日本人とはどんな民族であるのか…ということを伝えていきたい、そう思ったんだ。 |
日本人の精神とはどのようなものだとお考えですか。 |
武士道。武士道というのは、己のために生きるのではなく、自分の守るべき“誰かのため”“なにかのため”に存在するという考え方のこと。常に自分の命は誰かのために存在していると認識しながら生きていく精神を武士道だと、僕は思っている。日本って多宗教だし、宗教自体を信仰していない無宗教の人も少なくないよね。それって世界的にみても本当に特異なことなんだ。世界の9割を超える人たちは、なんらかの宗教を信仰していて、宗教の教えから生き方や道徳心を子供の頃から学んでいる。それなら日本人はなにから道徳や生き方を学んでいたのか? 僕は宗教の代わりになっていたものが武士道の精神だと思うんだ。 |
上杉謙信というと「敵に塩を送る」というエピソードが有名ですが、そうしたことも日本人の精神、美徳なのでしょうね。 |
上杉謙信という武将は、生涯“自分は誰かを守るために存在している”という精神を貫き通した人物なんだ。彼は戦国の世で無敗。にもかかわらず、侵略のための戦いを一度もしていない。これって、僕たちになにを教えてくれているんだろう。僕は“人としてやらなければならないこと”、それを貫き通す心の強さが自分の中にあれば誰にも負けない、ということを教えてくれているんじゃないかと思っている。史実から学ぶべきことって、たくさんあるんだよね。謙信が残した「第一義」という言葉もそう。人が存在するうえで一番大事にしなければならないのは「義」なんだ。すべてにおいて「義」がなければなんの意味ももたないと、僕はそう思う。 |
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Gackt(ガクト):バンド活動を経て、'99年ソロ活動“Gackt JOB”を始動。27枚のシングルと8枚のアルバムをリリースし、国内総売り上げ枚数は、1,000万枚を超える。TVやCM、小説の執筆や映画の主演など、多彩な才能を発揮し、'07年NHK大河ドラマ「風林火山」では上杉謙信役を演じる。
オフィシャルウェブサイト
http://gackt.com/ |
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