公安調査庁―共同通信記事でのコメント
「被害者」総連、反応複雑 「同胞に申し訳ない」
2007.06.29 共同通信
中央本部の売買取引が詐欺事件になり、「被害者」とされた朝鮮総連。「仲介役」の満井忠男(みつい・ただお)容疑者(73)らに総連が渡した約四億八千万円のうち約二億八千万円は未返却のままで、中央本部の競売も避けられそうにない。「同胞に申し訳ない」「本当にだまされたのか」。元公安調査庁長官緒方重威(おがた・しげたけ)容疑者(73)らの逮捕から一夜明けた二十九日、総連関係者らは複雑な表情を見せた。
二十九日朝の中央本部(東京都千代田区)は表面上、いつもと変わらない様子で職員らが出勤。付近では警視庁の警察官が警備に当たった。
「こんなことになってしまって…。年配の活動家ほど『同胞に申し訳ない』という気持ちが強い」。総連関係者はこう言って肩を落とす一方、「何としても総連を追い出したいという、政治的な意図をあらためて感じる」と憤った。
中央本部の競売手続きが始まったら、実際の競売までに約七カ月かかる見通しだが、明け渡しは確実な情勢。別の総連関係者は「在日朝鮮人のシンボルがなくなることは悲しいが、出るからといって活動がなくなるわけではない」。
「総連側に、だまされたという認識があるのか疑問だ」。そう指摘するのはコリア・レポート編集長の辺真一(ピョン・ジンイル)さん。「簡単にだまされる生易しい組織じゃない。背後には十万人の総連構成員もいる。相手を知り尽くした緒方容疑者が、多くの在日を敵に回して詐取する意図があったとは考えにくい」と首をかしげた。
元公安調査庁職員のフリージャーナリスト野田敬生(のだ・ひろなり)さんも「総連側を被害者とする構図に政治的配慮を感じる」と分析。「強制執行妨害容疑では、総連側の立件を考えなければならない。日朝の緊迫が高まり、米朝が急接近する中で日本だけが浮き上がってしまう。外交問題化することを避けたのでは」と推測した。