ここから本文エリア 病院の半数「救急の看板倒れ」 30病院の受け入れ拒否2007年12月29日 救急搬送された大阪府富田林市の女性(89)が府内の計30病院に受け入れを断られ、翌日に死亡した問題で、拒否した病院の半数で救急患者の受け入れ態勢が整っていないことが朝日新聞の調べでわかった。救急告示病院でありながら、救急患者を引き受ける人数が極端に少なかったり、入院患者の処置に追われて救急対応ができなかったりする例が目立つ。医師不足を背景に、都市部でも「看板倒れ」に陥っている救急病院の実情が浮かび上がった。
「入院・外来患者の処置中」を拒否の主な理由に挙げたのは17病院。このうち10病院は「病棟(入院)の患者に対応中だった」と答えた。大半の場合、同じ当直医が救急外来と入院患者の両方に対応しており、入院患者の容体が悪化すると、救急搬送に応じられなくなっているとみられる。 富田林市の総合病院は、同市消防本部から3回要請を受け、3回とも断った。「内科医が3〜4人不足し、当直は1人だけ。入院患者70人余の対応で手いっぱいだった」と説明する。 さらに、2病院が「重症患者に対応できない」と回答。同市の民間病院は「うちは療養型病院で、軽症の外傷患者しか救急対応していない」と明かす。「専門医が不在」も2病院あった。羽曳野市の病院は今年4月、大学の医局による医師引き揚げで常勤内科医4人が全員いなくなり、当直ができなくなった。 松原市の総合病院は「医師の交代時間」を理由に挙げた。担当者は「当日の当直医は非常勤の医師で、朝7時に帰ることになっていた。受け入れると、常勤医との引き継ぎに手間がかかる」。この病院の救急患者の受け入れは、1日わずか1〜2人という。 一方、近畿大医学部付属病院(大阪狭山市)の救命救急センターには、消防から連絡がなかった。重症患者に対応する併設の救急診療室には受け入れ要請があったが、満床で対応できなかった。消防からは、嘔吐(おうと)や下痢の症状だけで重篤と思わせる情報がなく、担当者も同センターに連絡しなかったという。 同消防本部の幹部は「病院からまた断られるかもしれない、と思いながらも電話をかけ続けるしかなかった」と話す。 ◇ 地方に比べると救急医療機関が多い大阪で、拒否が起きるのはなぜか。 大阪府医師会によると、入院が必要な重症患者を扱う府内の2次救急医療機関は06年3月末現在で265。4年間で23減った。搬送を断った件数も06年度が1施設平均250件と前年度比2割増。理由(複数可)は「専門医がいない」72%、「病床数不足」59%、「医師不足」39%だった。 調査をまとめた山本時彦理事は「2次救急が急減して機能不全になった。救急であっても専門医に診てもらいたいという患者のニーズが高まり、担当科の医師がいないと自信をもって搬送を受けられない」と話す。 厚生労働省救急医療検討会で座長を務める杏林大学の島崎修次教授は「地方では救急患者が少なく、受け皿となる救急病院も決まっているが、都市部は患者数に見合った医師・病床数が確保できておらず、搬送先を探すのに時間がかかる」とみる。東京都区部でも救急施設は02年から05年の3年間に32減の158に。搬送時間は43.2分で、全国平均より12分長く全国最長。2次救急は診療報酬の加算が少なく、病院にとってメリットが薄いこともあり、「もうからない中、無理して患者を受け入れる必要はないと考える病院が出てくる」。 2次救急施設への補助金も減っている。05年度には国から市町村に事業主体が移り、富田林市を含む南河内地区では2割減額になった。補助額は、患者がゼロでも何人受け入れても同じだ。 PR情報関西ニュース
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