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【暮らし】AID 出自の悩み深く 冊子や講演会で理解を訴え2007年12月29日 代理出産への関心が高まる一方、夫が重度の無精子症などの場合に第三者の精子を使って人工授精する方法(AID)で生まれた人たちは、出自に関する悩みを抱える。こうした問題を知ってもらおうと今月、「子どもが語るAID」という冊子を発行し、講演会を開いた。 (吉田瑠里) 冊子をまとめたのは、AIDで生まれた人の自助グループで、二〇〇五年一月に活動を始めた「DI Offspring Group(DOG)」。AIDは一九四八年に初めて実施され、現在までに一万人以上が生まれたとされる。日本産科婦人科学会によると、〇五年は千百三十人に実施、九十四人が生まれている。 冊子では「AIDで生まれた人が抱える問題」として、「成長してから事実を知るケースが多い」「精子の提供者を知ることができない」などを挙げている。 東京都内で開かれた講演会では、AIDで生まれた女性二人が壇上で、告知後の苦悩を話した。五年前に事実を知った二十代のAさんは半年ほど、誰にも相談できず「一人でいるときはずっと泣いていた。家出し、学校も中退した」という。「たとえ(精子の)提供者は分からなくても、AIDで生まれた事実を伝えるだけで、親子間にうそがないことだけは伝わる。早く告知してほしかった」 四十代のBさんは三十二歳で告知された。「小さいころの母との記憶を思い出すと、母との思い出はうその上に積み上げていた偽物だった、と憂うつになる」。二人は「AIDは長く続いているからうまくいっている、とされてしまう。追跡調査や生まれた子の意見を聞いていないのに」と訴えた。 「家族のアレルギーの有無などを質問されるから」と、病院へ行くのを避けるようになった人もいる。 講演会で司会を務めた慶応大医学部小児科教室の渡辺久子講師は「生殖補助医療で生まれた子どもは、自分が人造人間のように作られたのでは、と不気味に思うので、精子を提供した“人間”に会いたい。親は、最愛のわが子に恨まれるのでは、と切り出せない」。 一方で「(戦争から帰った男性が、熱病や傷害のために無精子症になることが多かった)戦後の時期には考えうる手段だが、長い目で見て許されることではない」と憤る。DOGの活動により「今後は子どもの人権を医療が考える流れになっていくと思う」と指摘した。 日本では、生殖補助医療について法の規制はなく、日本産科婦人科学会の見解があるだけだ。〇三年に厚生労働省の生殖補助医療部会が提出した報告書では、十五歳以上の子どもに自分の出自を知る権利を認めたが、法制化は見送られた。 現在、日本学術会議が法務省と厚労省の要請で「生殖補助医療の在り方」についての検討委員会を開いている。 厚労省は「同会議の報告を得て、法整備に着手する時期かどうかを検討したい」としている。 冊子は1冊500円。購入希望者は「冊子購入」と書き、氏名、住所、電話番号、購入部数を明記の上、DOGへメール(DOGoffice@hotmail.co.jp)で申し込む。 <AID(非配偶者間人工授精)> 無精子症などの夫に代わり、第三者の精子を妻の子宮に入れ、妊娠・出産を試みる不妊治療法。育ての父親と遺伝的なつながりはない。法的規制はないが、日本産科婦人科学会の見解は、(1)AID以外の方法では妊娠の可能性がない(2)戸籍上の夫婦に限定(3)精子提供者のプライバシー保護のため、精子提供者は匿名とし、実施医師は精子提供者の記録を保存する(4)精子提供は営利目的で行われるべきものではない−などとしている。
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