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2007年12月30日

◎外国人1%時代 現実になった北陸の国際化

 石川県在住の外国人が、ことし一万人を超えた。人口比で1%、百人に一人が外国人に なったことになる。外国人1%超えは、地方の国際化指数の一つと言われ、富山県は数年前に1%を超えている。どこか遠いところの話のように聞こえた国際化がいつの間にか、足元で現実になっているのである。

 一昔前まで、国際化と言えばエリート留学生の増加や、外国人観光客の増加などプラス 面だけを指し、マイナス面を考えることが少なかった。しかし、射水市郊外に見られるような無秩序な外国人中古車販売村が出現したり、南加賀地方でも外国人労働者が増え、子弟の教育問題などでかつて経験したことのない難問を突きつけている。それ以外でも、さまざまなあつれきを生み、中でも外国人犯罪の増加は大きな問題である。

 国際化が、このような形で、わたしたちの住む地域に定着するとは予想しなかったこと である。が、外国人居住者は今後増えることはあっても、減ることはあるまい。関東や東海地方の外国人増加は北陸の比ではない。社会的なあつれきも大きいと言われる一方で、労働の担い手として欠かせない存在になっている。

 異業種交流が新しい世界を開くと言われたように「よそ者」や「異分子」が企業活動を 活発化させると指摘される時代だ。北陸でも、外国人の増加が避けようがない以上、「清濁併せ飲む」姿勢がなければ地域の活力は生まれてこないだろう。

 国際犯罪防止策が必要なのは言うまでもないが、行政、民間企業とも外国人を前向きに 受け入れるような発想の転換と、県民と外国人の交流や双方が相談できる窓口拡大などの環境整備が大切になる。

 北陸では県外出身者を「旅の人」と表現するように、どちらかというと排他的な県民気 質があるとされる。一方で能登の「まれびと信仰」のように、外から来る人を歓迎し、もてなす雰囲気もある。

 光も影も、裏も表もあるのが本当の「国際社会」だ。在住外国人も新しい「旅の人」に なるのかもしれない。自然体で受け入れ、異文化を地域の活力にしてきた先人の知恵にも学びたい。

◎ブット元首相暗殺 核保有国の不安定が心配

 パキスタンのベナジル・ブット元首相を暗殺した犯人やその背後関係は不透明だ。犯行 声明など事件に直接結びつく確たる情報がないからだが、ブット氏が反テロの姿勢を鮮明にしていたことから同国を不安定に陥れる狙いを持ったイスラム過激派による犯行との見方が支配的であり、同国の治安当局もそうした見方である。

 ただ、ブット氏は同国で唯一の世俗政党であるパキスタン人民党(PPP)を率いてお り、首相時代、軍部と対立していたこともあり、軍内部の勢力による犯行説もある。

 どっちにせよ、パキスタンは核保有国である上に、アフガニスタンのテロ勢力との戦い の最前線でもあり、同国の政情不安定に乗じて核がテロリストの手に渡る最悪の事態が心配である。

 その核について、ムシャラフ大統領は何重もの指揮系統で守られているとして安全性を 繰り返し強調してきた。が、いわゆる西側先進諸国は同国の核のボタンを押す指揮命令系統があいまいなことを懸念し、透明にしてほしいために同国の民主化を求めてきたのだった。

 このような中で、説得力を持つのは、ブット氏が暗殺されたことで、米英両国がひそか に描いていた安定へのシナリオが葬り去られたとの見方だ。それは、来年一月八日に行われる下院と四つの州議会選挙後、ムシャラフ大統領とブット元首相を和解させ、かたや大統領、こなた首相として役割分担させ、この二人をリーダーにテロ勢力を掃討する「文民統治の国家」に仕立て上げるというものである。今年十月、ブット氏が亡命先の英国から帰国したのは、米英がムシャラフ大統領を説得したからであるし、ムシャラフ大統領が陸軍参謀総長の職を辞したのもまたシナリオに沿った結果だといわれる。

 シナリオの真実性はともかく、パキスタンの民主化を後押ししているのは米英、とりわ け米国である。また、冷戦時代、旧ソ連と手を結んで中国と対立したインドが核を開発したとき、対抗してパキスタンの核開発を助けたのが中国である。米国、中国、インド、そしてロシアも絡み合う複雑なパキスタンだが、何よりも関係国がムシャラフ政権を支え、安定化に努めてほしいものだ。


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