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2007年12月30日

 真宗大谷派金沢別院の梵鐘(ぼんしょう)が取り替えられた。天文十四年(一五四五)銘の古鐘が下ろされ、除夜の鐘は新しい音を響かせることになるが、梵鐘だけではなくて鐘をつく棒(撞木(しゅもく))にも注目したい

一般的な撞木はシュロの木を使っている。大きいのは松や杉材もあり、最近は先だけが木製で芯に金属を入れて重さを出したのもある。名鐘の力を引き出すのは名撞木であることに気づく

坂本龍馬が西郷隆盛を釣り鐘に例えた有名な人物評がある。「大きくたたけば大きく響く。小さくたたけば小さく響く」。西郷の大きさと、その力量を見抜いた龍馬のスケールを思わせて今に語り継がれている。西郷が鐘で龍馬は撞木だったのは言うまでもない

維新の偉人に比べるのは気が引けるが、今年の政官界を振り返ると「梵鐘と撞木」より「提灯(ちょうちん)と釣り鐘」の例えが合う。能力に釣り合わない地位に就いて迷惑な音をまき散らした者はいなかったか。ポストに恐縮し恥じるどころか、傲慢(ごうまん)に反り返った者はいなかったか

他人ごとではない。「時鐘」の名に恥じることはなかったか。胸に手を当てて考えてみたい、あすは大(おお)晦日(みそか)。


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