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12月29日付

07年国内回顧 偽装の裏にモラル喪失

 2007年の国内は偽装事件があまりにも目立った。豚肉を使った「牛肉コロッケ」や船場吉兆の原材料偽装。守屋武昌防衛省事務次官の業者接待によるゴルフでは偽の名前も使っていた。背景には、ばれなければ何をやってもいいとするモラルの喪失がある。

 食品偽装がこれほどニュースになった年はなかった。年明け早々、ペコちゃんキャラクターで知られる洋菓子チェーン不二家で、賞味期限切れの原料使用が発覚。その後、北海道で豚肉を使った牛肉コロッケ、同じ北海道のおみやげの定番として人気があった「白い恋人」の賞味期限改ざんが明るみに出た。

 さらに、三重県の伊勢名物「赤福」、秋田の比内地鶏、大阪の船場吉兆などで賞味期限切れや原材料偽装などが発覚した。船場吉兆は「パートの従業員が勝手にやった」と責任の所在まで偽装する始末。経営者の卑怯(ひきょう)さが、よけいに批判を招くことになった。

 食の安全・安心は国民生活を支える大きな柱である。企業としては「もうける」ことも必要だろうが、「安心して食べてもらう」ことを基本においてほしい。味はもちろんだが、安全性の追及に時間をかけてもらいたい。

 国と国民を守る立場にある防衛省も、大きく信頼を失うことになった。官僚のトップである守屋前防衛次官が、防衛専門商社「山田洋行」に便宜を図った見返りに、過剰なゴルフ接待を受けた疑いで、妻とともに逮捕された。接待がばれないように偽名を使ったり、妻の口座に振り込ませたりしていた。

 防衛省はことし「庁」から「省」に昇格したばかりである。防衛装備疑惑はまだ全容解明されていない。うみを出し切って国民の信頼を取り戻すことが急務だ。

 政治では大きな異変があった。参議院選で自民党が歴史的な大敗を喫した。安倍晋三前首相が突然退陣し、後任に福田康夫首相が選ばれた。参議院は野党が多数、衆議院は与党多数という「ねじれ国会」が出現。与党は新テロ対策特別措置法案を成立させるために臨時国会を再延長。異例の越年国会となった。

 自民大敗の最大の要因は「宙に浮いた年金」問題である。該当者不明の年金記録が5000万件に上ることが分かり、国民の怒りが爆発した。自民党は「来年3月までに名寄せを済ませる」としていたが、不可能であることが分かった。社会保険庁は自らのずさんな記録管理が招いたことであり、信頼回復に骨身を削ってもらいたい。

 自民大敗のもう1つの要因は「政治とカネ」問題であり、閣僚の説明不足だった。事務所費問題を追及された松岡利勝元農相は「何とか還元水を付けている」とあいまいな答弁をし、自殺した。

 後任の赤城徳彦元農相も、顔のばんそうこうが何によるものかを説明できず、辞任に追い込まれた。赤城氏自身はささいなことだと思っていたようだが、大臣たるものささいなことでも口をつぐめば、疑惑はますます膨らむことに気づくべきだった。

 能登、中越沖地震では原発で火災や水漏れがあり、安全性に不安が広がった。放っておけばほかの原発設置県も不安になる。耐震基準や断層の可能性などを、そのつど丁寧に説明すべきだろう。

 この1年、食品偽装、年金問題、政治とカネの問題などで謝罪する姿を何度も見た。背後にあるのはモラルの欠如である。だれかに見られているいないにかかわらず、悪いことはしないという意志を強く持ちたい。(園田 寛)

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佐賀新聞1面掲載のコラム。世相や社会問題、身近なできごとを素材に、3人の筆者がさまざまな視点でつづる

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