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テクノロジー

デジタル放送の暗号化に疑問の声が相次ぐ、総務省の検討委員会

12月27日22時33分配信 Impress Watch


 総務省の情報通信審議会は27日、「デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会」の第30回会合を開催した。

 委員会では、デジタル放送のコピー制御についての実効性を担保するための仕組み(エンフォースメント)についての検討状況や、「ダビング10」導入に向けての準備状況などが報告された後、参考資料として地上デジタル放送を暗号化せずにPCに出力できる機器が流通しているという状況報告が事務局からあり、出席した委員からは現在デジタル放送にかけられているスクランブル(暗号化)についての意見が相次いだ。

● B-CASの仕組みが破られ「これまでにかけたコストはなんだったのか」の声も
 現在のデジタル放送は、スクランブルがかけられた放送波をチューナーで受信し、チューナーではB-CASカードによりスクランブルを解除した後、出力時に再度DTCPやCPRMといった暗号化を施すという仕組みとなっている。スクランブルの解除に必要となるB-CASカードは、こうした仕組みを守っていると認定された機器にのみ発行されるため、スクランブルの解除は困難であるとされてきた。

 しかし、海外メーカーからこうした仕組みを無視した機器が登場し、流通し始めているという状況が発生。こうした機器は、他の機器用に発行されたB-CASカードを流用することでスクランブルを解除し、PCには暗号化されない状態で出力するという方法を用いていると思われるという事務局からの説明があった。

 こうした状況説明の後、出席した委員からは現行のデジタル放送のスクランブルについて疑問の声が相次いだ。主婦連合会の河村真紀子委員は、「B-CASカードによるスクランブルの仕組みを破ることは大変難しいと伺っていたが、説明を聞く限りでは簡単に破られたように思える。こんなものだったら、この仕組みにこれまでかけたコストはなんだったのかと思う」と発言。生活経済ジャーナリストの高橋伸子氏も、「今回この仕組みが破られたことで、それを防ぐために新しい仕組みを導入しようといった話になると、また膨大なコストが発生するのではないか」と懸念を示した。

 委員会の主査を務める慶應義塾大学教授の村井純氏は、こうした問題については委員会に設けられた技術検討ワーキングの中で現在検討を進めていると説明。技術検討ワーキングでは、スクランブルを行なわない場合には「ルール違反」に制度で対応する必要があるが、こうした制度的な手法と技術的手法ではどちらの方がトータルのコストが低くなるのかといった点など、スクランブル自体の可否や総合的なコスト負担について検討していくと述べた。

● 権利者側からも「スクランブルは解除する方向で検討を」という意見が
 デジタル放送のスクランブルについては、権利者の側からも疑問の声が挙がった。実演家著作隣接権センターの椎名和夫氏は、「スクランブルを外すことなど権利者が承知するわけがないなどと言われることもあるが、コピーワンスの時と同様に、スクランブルの導入についても我々は一切関与していない」と説明。また、ダビング10という形でコピーワンスの緩和に向けて努力をしてきたが、「それをあざ笑うような機械がこうして出てきており、こうした実態に照らせば、現状のスクランブルはエンフォースメントとしての役割が既に失われてしまっていると考えられる」と主張。こうしたことから、椎名氏は「この際、スクランブルは解除する方向で話をしていけばいいのではないか」と述べ、スクランブル解除の方向での検討を求めた。

 一方、既に決まったダビング10のルールについては、放送事業者やメーカー、行政の責任において、ルールを守っていくための制度的なエンフォースメントについて議論する必要があると説明。また、コピーワンスの緩和にあたっては、クリエイターへの適正な対価が前提条件であることが情報通信審議会の第4次中間答申でも述べられているが、電子情報技術産業協会(JEITA)はデジタル録画についての私的録画補償金は不要と主張しており、この問題が解決するまではダビング10の実施は凍結すべきだと主張した。

 日本音楽事業者協会の堀義貴氏も、「権利者がスクランブルで権利保護をしてくださいとお願いしたことは1回もない」と述べ、技術的な方法だけで権利が守られるとは考えていないと説明。問題なのは機器よりも出回っているコピー商品の方であり、こうしたコピーを売ったり頒布したりする行為への対策を強化していくことが重要だと訴えた。

 これに対して放送事業者の側からは、「地上デジタル放送が始まった4年前に、我々が取り得る手段は(スクランブルという)技術エンフォースメントだけだった」という説明がなされ、今後はこうした技術的な手段をどこまで制度的な手段で置き換えられるかといったことも含め、議論を進めていくとした。

 また、ダビング10の導入については、2008年6月の導入に向けて準備を進めており、2008年1月末には仕様を確定する予定で、正確な開始日についても1月中に決定し、放送局やメーカーが協力して周知を進めていきたいとした。

関連情報

■URL

  デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会

  http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/joho_tsusin/digitalcontent.html

( 三柳英樹 )

2007/12/27 21:43

最終更新:12月27日22時33分

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