白バイのスリップ痕、さっか痕、破片位置

トップページへ戻る

事故により白バイ右側のガード類やマフラーには路面に擦った傷が残り、路面上には写真の様に様々な痕跡が残っています。これらの痕跡は多くの謎を含んでいます。タイヤが残した斜めの黒い痕跡と急激に深い路面傷から始まり、直角に曲がる擦り傷。バスのスリップ痕から1m以内の位置関係。白バイ破片がバス右前方から白バイの右側に集中。

バス側面に対して90度より少し浅い程度の角度で衝突した白バイが、どの様な挙動になれば、これら痕跡を残す可能性があるのか?バスの動きをベースに解析しました。

白バイが動いたと思われる軌跡

※1マスは50cm
※白バイの投影図はVFR800の数値から作成
※赤部分の白バイは右60度バンク状態(衝突の瞬間)


バスを50〜60cm横滑りさせる衝突エネルギーを白バイが与えていることから、白バイとバス側面の衝突角度は90度に近いはずです。衝突時の白バイは右へ60度程度バンクした状態で右旋回による衝突回避を行っていたと考えられるので、90度よりやや浅め、80度程度だと推測します。

衝突の瞬間が赤色です。衝突は右バンクした状態で、バスのバンパーと側面下部のパネルを押し曲げながら、バス下部に潜り込む様に入ります。その後、白バイのフレームやエンジンがバスフレームに衝突。この段階で白バイは進行方向の動きを止められます。バスが右ロールし横滑りを開始する時、白バイは衝突の衝撃でリアが浮き、横Gの影響でフロントを中心にリアがバスに沿う方向に宙を舞ってから接地。同時にバスは斜めに滑るため、上の図の青色の白バイ位置の少し前に接地します。

緑色の付近がリアが宙に浮いてフロントを中心にバス側に寄っている動きをしたと考えています。

接地時点ではバスとまだ角度が残っているため、一気にバスに沿う状態まで滑ります(15〜25cm程度)。滑りが終わりバスに完全に車体を止められた時点で、残るエネルギーはバスが斜め前に滑る方に向かい、バスの最終停車位置までバススリップ痕に沿う状態で滑ります。

青色の少し手前時点、白バイ接地の瞬間はサイドボックス前のガードが強く接地し、路面に急激な傷を発生させます。ほぼ同時にサイドボックス横のガードが接地。一気にバスに向かうスライドでバスのスリップ痕に対して直角に近く強い痕跡を路面に描きます。ほんの少し遅れて、マフラー、ステップ、リアタイアなどが接地。少しバス方向に痕跡を残しつつ、白バイの横滑りがバスに止められ、バスのスリップ痕に沿う方向に路面傷が曲がります。黒い部分はリアタイアの痕跡です。先に接地していたサイドボックス前のガードも白バイの滑りが止まった時点で急激に角度を変え、バススリップ痕に沿う方向に伸びます。

上の図の路面痕跡は、下からリアタイヤの痕跡、サイドボックス横のガード、サイドボックス前のガード、マフラー、ステップの痕跡です。

ステップの痕跡は「U」の様な特殊な形になっています。これは、転倒時にステップを破損しない様に折り畳める構造になっている為だと思われます。接地後に折り畳む動きをしながら痕跡が残る事で、他とは少し違った軌跡になったと考えられます。

白バイ破片位置

衝突の瞬間にバスに接触した白バイのライト下左側カウルは破損したはずです。この破片ですが、上の軌跡図をみると白バイの進行方向に飛べば白バイ最終位置の右前付近になります。右60度バンク状態で旋回中であることを考えれば、ほとんどの破損部分は白バイの進行方向に飛び、バスボディとの干渉が加わって、最終的に白バイ最終位置の前方〜右側に飛散したと考えられます。

サイドボックスのフタはリアタイヤが宙を舞い接地した衝撃で開いたと考えられ、白バイは接地後に一瞬バス側に寄ってから横の動きを止められるので、まだ内容物は放りだされません。路面傷の方向に白バイが滑り、停車時した時に慣性でサイドボックスの内容物が外に出たと思われます。

白バイの衝突速度

白バイの衝突速度はバスと白バイの破損状況から、警察の科学捜査研究所の数値で、28〜54km/hとされています。この数値、幅が広いのは「転倒滑走する二輪車と四輪車の衝突実験(大阪府警察本部科学捜査研究所)」の論文にも書かれていますが、事故時の二輪車の破損状況から速度を算出するのは非常に難しい(同じ速度でもハンドルの向きなど条件によってバイクの破損や変形量が大きく変化する)からだと思われます。

しかし、この数値の大きな抜けとして「バスが50〜60cm横滑りした」という可能性は含まれていません。バスが白バイの衝撃を微動だにせず受け止めた前提になっています。バスが横滑りしていれば、それは白バイから見ると進行方向。つまり衝撃吸収に働きます。破損状態は大きく変わるはずですので、逆に言えば白バイの速度がもっと速い可能性が出てきます。

バスの横滑りが証明できれば、裁判所が物理の専門家が出した数字、と信用する28〜54km/hの数字の前提条件が崩れるはずです。

トップページへ戻る