現在位置:asahi.com>国際>スパイシー!ソウル> 記事 韓国対台湾 ―台湾通の日本人が見たソウル─2007年12月29日 亜熱帯の台北に長く暮らし、日本に帰国後、『スピリチュアル紀行 台湾』という本を書かれた光瀬憲子さんが、厳寒のソウルに遊びに来てくれました。韓国同様、日本の統治下にあり、解放後も日本との関わりが深く、日本人が気楽に出かける台湾に詳しい彼女の目に、ソウルの街や韓国人の姿はどのように映ったのでしょうか? 私自身も昨年、台湾一周旅行を体験しているので大いに興味があります。マッコルリをいただきながら、光瀬さんの話をじっくり聞いてみました。
── ソウルの街の印象は? 光瀬 台北と比べると清潔感があり、日本人向けの街だと思いました。台北のせせこましく、ほこりっぽい感じと比べると、ソウルにはどことなく東京と似た洗練された雰囲気が漂っています。都会の真ん中に大きな川(漢江)が流れる、広くゆったりとした風景が印象的で、季節感が日本に似ています。 ── 旅の間にふれあった韓国人の印象は? 光瀬 “激しく、しつこく、情熱的”これが韓国人の印象です。台湾人も激しく、情熱的なところはありますが、台湾特有の「日本らしさ」とでも言うべき恥じらいのようなものがあると思います。どこかしら相手に気をつかう、丸っこい雰囲気の台湾人と比べ、韓国人はもっと「尖っている」と感じました。よい意味で激しく、感情的であり、日本をはじめとする諸外国に対するライバル意識が強い。アメリカと日本を崇拝し、韓国の真似ばかりしているように見える台湾人より、プライドが高いように見えました。 ── 韓国料理についての感想は? 光瀬 最大の違いは「油」。とにかく油を多く用いる台湾料理と比べ、韓国料理は油の少ない汁物が主体。だからたくさん食べられるし、食べても太らないのでは? 食べれば食べるだけ身についてしまう台湾料理とは大きく違います。台湾も韓国も大量の汁物をとる部分はよく似ていますが、韓国の汁物と比べると、台湾の汁物は総じて味が濃いと思います。一方、屋台で売られている菓子などはよく似ており、甘いもの、コクがあるものを好む点は共通するようです。 ── ショッピングについての感想は? 光瀬 極端な言い方ですが、日本が「正当なものを不当に高い値段で買う」国だとすると、韓国は「正当なものを正当な値段で買う」というイメージです。主婦の目で見て、モノ自体は台湾より韓国のほうが優れているようですが、台湾のように「少々いい加減なものを値切り倒して買う」という楽しみさは欠ける気がしました。ただ、デパートやディスカウントショップなどショッピング街はとても洗練されていて、安心して買い物ができました。ファッションも台湾人に比べると断然オシャレです。ただし、市場に関しては台湾と韓国は非常によく似ています。例えば、ソウルの「南大門市場」は看板をハングルから漢字に変えれば、そのまま台北の「士林夜市」になると思いました。市場は、売り物の配置、道の広さ、照明の具合、路地裏の雰囲気など、瓜二つでしたね。 ── もっとも印象に残った観光資源は? 光瀬 滞在中、毎日通ったチムジルバン(Tシャツと短パンで利用する多目的サウナ)ですね。台湾でも少しずつ大衆浴場や温泉旅館がオープンしていますが、韓国のチムジルバンは台湾の入浴施設に比べるとずっと韓国的で大衆的。心からくつろぐことができます。台湾も韓国も男女間の壁は高いようですが、いったん「女湯」に入ると、台湾女性は恥ずかしそうにタオルで前を隠しながら入浴するのに対し、韓国女性は何も隠さず、お尻とお尻がぶつかったってへっちゃら(笑)。これには驚きました。同性どうしとなると解放感が生まれるのですね。 ── ソウルにない台北の魅力とは? 光瀬 台北とソウルはよく似ていて、日本人旅行者が台湾にハマるか、韓国にハマるかは紙一重だと思いました。どちらも日本に似ているようでちょっと違う、独特のあたたかさがある。けれど、私がソウルより台北にホッとしてしまうのは、街全体が気どらず、人々の肩の力が抜けているからです。西洋的近代化という点では日本や韓国よりも少し出遅れたけど、まぁいいさ…といった雰囲気が、なんともいとおしいのです。そして、韓国以上に「日本らしさ」が強く残っているのも台湾の特徴です。日本語が通じやすく、日本人をとてもよく理解している。日本人に優しい街であり、日本人であることがくすぐったくなるような、うれしくなるような優しさが、台湾にはあると思います。 文化の違いを考えるときは、ついつい日本対韓国というように二元論で考えてしまいますが、そこにもうひとつの要素が加わると、新鮮な発見があるようです。これからは私も、台湾や中国から見た韓国、日本を意識していきたいと思います。 プロフィール
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