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原発「ふげん」壁の強度不足、工事の管理不備が原因

2007年12月28日

 日本独自の原発として開発された新型転換炉「ふげん」(福井県敦賀市、廃炉準備中)のコンクリート壁の強度が設計基準を下回っていた問題で、日本原子力研究開発機構は28日、原因は施工管理の不備との調査結果を明らかにした。発注時に作成した工事仕様書と異なるコンクリートが使われていた。原子力機構は「この問題を教訓とし、建設時の品質管理のより一層の改善を図りたい」としている。

写真新型転換炉「ふげん」

 ふげんは79年に運転開始し、03年に運転終了した。強度不足があったのは、中央制御室やタービンがある原子炉補助建屋。14枚の壁から抜き取った試料計97本のうち54本で設計基準の1平方ミリあたり22.06N(ニュートン=力の単位)を下回った。50センチ以上の厚い壁の中央部の強度はほとんどが基準を満たしていたが、厚い壁の表層部は最低14.4N、薄い壁は最低10.6Nの場所があるなど、全体的に基準を下回る傾向が強かった。各壁の平均値では、6枚が基準を下回った。

 試料を分析したところ、通常のセメントに石炭灰(フライアッシュ)を加えていたことが判明。石炭灰を混ぜるとコンクリートの流動性がよくなり、熱膨張を防ぐが、固まるまでに時間がかかる。しかし、工事仕様書には石炭灰使用の記載がなく、通常のコンクリートとして施工し、コンクリートを流し込む型枠を早く外したため、水分が蒸発しすぎて十分な強度が得られなかったという。

 原子炉建屋や燃料貯蔵プール建屋については「厚い壁が多く、構造上問題ないと判断している」とし、調査を実施しない考えを示した。

 原子力安全・保安院放射性廃棄物規制課総合廃止措置対策室の鈴木宏二室長は「当時はコンクリートの施工基準が明確ではなかった。後に基準が整備され、ほかの原子力施設に同様の事態はない」と話している。

     ◇

 《NPO法人原子力資料情報室の西尾漠・共同代表の話》 原子力発電所の建物の壁は放射能を外に漏らさないための最後のとりで。その品質管理が甘かったのは問題だ。調査をこれで終わりにするのではなく、仕様書通りに施工されず、石炭灰を入れることにした経緯など、不明点をもっと詳しく調査すべきだ。原子炉建屋の調査も当然するべきだろう。

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