二〇〇七年版「政府開発援助(ODA)白書」によると、日本の〇六年のODA実績は、前年比14・9%減の約百十一億八千七百万ドル(約一兆三千億円)だった。世界二位から三位へランクを下げた。
一九九〇年代を通じ世界トップの地位にあった日本のODA実績だが、予算は九七年をピークに減少し、この十年間で約四割削減され、現在は八〇年代のレベルにある。
昨年、政府の「骨太の方針」で、ODA予算を〇七年度から五年間、毎年2―4%削減することが決まった。福田政権で初めての〇八年度予算でも4・0%減額された。
欧米諸国は〇一年の米中枢同時テロ以降、貧困がテロの温床となっているとして援助を増やす傾向にある。日本だけ削減が続けば一〇年ごろには、ODA実績はドイツ、フランス、イタリアにも抜かれ六位に下がる見通しだ。
実績減の要因は、政府予算の減額に加え、政府貸し付けなどの回収額が増加したこと、イラクやインド洋津波災害の緊急援助が減少したことなどがあるとしている。
ODAは日本の重要な国際貢献である。日本の発言力の低下も憂慮される。白書では、戦略的な視点を盛り込み、コスト縮減や予算の厳選・重点化を進めるとしている。日本の貢献を明確にできる二国間の無償資金協力や技術協力に重点配分することも重要だが、増額へ方針転換すべきではないか。
改革策では、内閣に司令塔となる海外経済協力会議を置いた。また、実施機関の国際協力機構(JICA)に来年から円借款業務が移管され、無償資金協力などODAの主要業務を一手に引き受けることになる。
今後の支援の重点項目として、二酸化炭素など温室効果ガスの排出削減や森林保全といった地球温暖化対策を打ち出した。アフリカなど気候変動の影響を受けやすい地域を積極支援する姿勢も強調している。来年、横浜市で開かれるアフリカ開発会議と主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)で主要議題となるのを意識してのことだ。
白書には平和構築や民主化へのODAの取り組みも紹介されている。紛争が続くスーダンで学校給食を出し就学率を向上させたり、ネパールの和平プロセスで小学校の運営に住民が協力したケース、マラリア対策のためタンザニアの蚊帳メーカーに技術供与した官民連携の取り組みなど、さまざまな事例が興味深い。
ODAの重要性を国民に広く理解してもらうため、国際貢献の実態を伝える努力も求められるだろう。
民主党がまとめた税制改革大綱がクローズアップされている。これまでは与党が決めた税制大綱を軸に国会で議論が進み、民主党のものは目立たなかった。今回、注目を集めるのは、参院で民主党が主導権を握る「ねじれ国会」ならではの現象といえよう。
民主党は道路特定財源や地方財政力の格差是正の在り方などについて、与党との対決色を鮮明に打ち出した。次期衆院選をにらみ政権担当能力をアピールする狙いだろうが、対立軸を明確に示したことは評価できる。来年一月中旬から予定される通常国会で、互いに政策の妥当性を競い合うよう望みたい。
最大の焦点は来年春に期限が切れる道路特定財源の暫定税率問題だ。与党は本来より高い暫定税率を十年間維持するとした。民主党は全額、使途を限らない一般財源にして暫定税率は廃止するという。
一般財源化は批判が強いうえ、暫定税率の廃止も財政がひっ迫している中では問題が多い。廃止すればガソリン価格は一リットル当たり約二十五円安くなりドライバーから歓迎されるだろうが、道路財源に大きな穴があく。
廃止に伴う税収減は、少なくとも約二兆六千億円に上る。民主党内でも反対意見が根強いため、「地方の道路整備事業は従来水準を維持する」と大綱に明記した。しかし、財源をどうするかはあいまいで、説得力に欠ける。
民主党は地方間の財政力格差の是正策として与党が決めた地方税の再配分や「ふるさと納税」にも反対する。補助金を地方が自由に使えるように衣替えする対案を示した。消費税への対応も異なる。国会では有権者の判断材料になるよう、分かりやすく議論を深める必要がある。
(2007年12月28日掲載)