三島市の中心部を流れる源兵衛川は水辺再生の成功例として知られる。せせらぎではミシマバイカモが可憐な小さな花を咲かせ、夏にはホタルが乱舞する。絶滅危惧種に指定されているホトケドジョウも戻ってきた
▼源兵衛川も他の河川同様、高度成長の荒波の中で、次第に悪臭を放つどぶ川と化していった。再び緑豊かな環境にするのに15年もの歳月を要したのである。再生への挑戦が緒についたころ、三島支局を担当し、その取り組みを追った
▼声を上げたのは地域に暮らす市民だ。商店主や会社員、公務員、主婦、市議、企業経営者らさまざまな人がせせらぎ復活を夢見て一つの輪になった。市民、行政、企業が連携するグラウンドワークと呼ばれる環境再生手法の導入へ旗振り役を務め、自費で先進地英国まで調査に出かけた
▼「右手にスコップ、左手に缶ビール」。指導的な立場にある市民のよく使う言葉が印象深い。どんな小さな活動でも率先して土にまみれ、そして賛同する仲間を増やしていく。そんな意味になろうか。行動する市民でもあった
▼先の3連休の前日、その源兵衛川に生コンが流れ込み、多数の小魚が死んだ。多くのホトケドジョウも死んだ。県が発注した工事現場からの流出で、今はNPO法人として活動する市民らが人海戦術で川底の生コンを丁寧にすくい取り被害の拡大を防いだ
▼県の対応は当初、休み明けに対策会議を開いてから、というのんびりしたものだったらしい。県の方針に従えば被害はますます広がったとNPOはみる。「右手にスコップ」で清流を取り戻した市民と、「仕事」として加わった行政側と、残念だが、その思いには相当な開きがあったのだろう。
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