違法行為を繰り返していた日雇い派遣大手のグッドウィル(東京)に対して、厚生労働省は年明け早々に事業停止命令を出す。厳罰処分は当然だ。労働者の使い捨てを許してはならない。
「今回は悪質だ。大手企業でこれだけ違反行為を繰り返していては厳しい処分はまぬかれない」−。厚労省幹部はこのところ相次いで発覚したグッドウィルの不祥事に憤りを隠さない。
若者や主婦たちが携帯電話などで仕事を探して行ってみると、実際は違った仕事だったり賃金が少なかった。そんないいかげんな派遣を繰り返していたのがグッドウィルだ。労働者派遣法で禁止されている港湾荷役や建設現場へ派遣したほか、契約とは別の会社に労働者を送り込む二重派遣という違反も行っていた。
すでに同省は(1)全国約八百の事業所のうち八十九事業所に対して事業停止四カ月(2)そのほかの事業所は二カ月−などの命令を出す方針を固めている。本来ならば同社トップの完全退任だけでなく、違法派遣を受け入れていた企業も処分すべきだ。
日雇い派遣業界では大手のフルキャスト(東京)が今夏、やはり事業停止命令を受けている。背景には過当競争があるとされるが、度重なる違反は一部企業による不祥事ではなく一日単位という雇用形態に構造的問題があると言わざるを得ない。
一九八六年に施行された労働者派遣法は対象業務をソフトウエア開発など専門分野に限定していた。だが労働市場の規制緩和で九九年に建設や港湾運送、警備、医療、物の製造などを除き原則自由化された。二〇〇四年からは物の製造業務も解禁され、派遣労働者全体の増加とともに日雇い派遣も急増してきた。
現在、労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)は労働者派遣制度の見直し作業を審議中だ。これまでの議論で労働者側は不安定雇用と低賃金、日雇い派遣の温床となる登録型派遣の原則禁止を主張。一方、使用者側は自由に働く機会を求める労働者ニーズもあるとして派遣制度の一層の規制緩和を主張し、審議会の結論は来年に先送りされた。
日雇い派遣労働者は全国に約五万一千人。平均就業日数は月十四日で平均月収は約十三万三千円−という厚労省調査がある。実態はもっと深刻でワーキングプア(働く貧困層)増加の一因と指摘する声がある。
今回の不祥事を機に与党側も派遣会社と受け入れ会社が守るべき「ガイドラインの作成」を求めた。政府は日雇い派遣の削減に向けた措置を、早急に実施する必要がある。
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