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【主張】ミサイル迎撃成功 日米同盟緊密化の契機に
日米の同盟関係の重要性を再確認する契機になったといえよう。
海上自衛隊のイージス艦「こんごう」がハワイ沖で海上配備型迎撃ミサイル(SM3)を発射し、標的の弾道ミサイル迎撃に成功した。SM3の搭載、試射は米国以外では初めてである。米軍と合同の試験だったが、海自のたゆまぬ訓練と努力の賜物(たまもの)だ。
今回の発射試験は、昨年7月の北朝鮮による弾道ミサイルの連続発射や10月の地下核実験を受け、日本が弾道ミサイル防衛の整備を加速する一環である。こんごうのSM3配備は当初の来年3月予定を前倒ししたものだ。
北朝鮮は日本全土を射程に収める弾道ミサイル「ノドン」を配備している。核弾頭の小型化は不明だが、高まる危機に対する備えを万全にすることは当たり前である。
海自はイージス艦情報の流出事件で幹部自衛官が逮捕され、国民は自衛隊への不信感を募らせた。こんごうを含めたSM3搭載のイージス艦は平成22年度末までに4隻配備される予定である。海自は国の守りをさらに固め、信頼に応えねばならない。
重要なことは、日本のミサイル防衛が米国との共同作業なくしては成立しないことだ。ミサイル発射は米国の早期警戒衛星でしか探知できず、自衛隊は情報をもらう立場でしかない。
日米共同防衛なくして今の日本の平和と安全は守れない。しかし、日本政府は迎撃対象を「日本に向けて現に飛来する弾道ミサイルなど」に限っている。集団的自衛権の行使は憲法上禁じられているとの解釈によるものだ。
安倍前政権では、米国に向かうミサイルを撃ち落とすことが集団的自衛権に当たるのかどうか検討するため「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」を発足させた。だが、政権交代もあってか、いまだに報告書は提出されぬままたなざらしになっている。
福田康夫首相は集団的自衛権行使の容認には慎重な姿勢を示しており、報告書は封印されるともいわれる。
日米の同盟関係は、インド洋での海自による給油支援撤収、在日米軍駐留経費負担、テロ支援国家指定問題などで双方が疑心暗鬼に陥っているとされる。ミサイル迎撃成功は、同盟を後退させないことの重みを物語る。