8年ぶりの診療報酬本体引き上げだけど…(07年重大ニュース10の10)

「2007年医療・介護重大ニュース」10

第10回「2008年診療報酬改定」

 2002年以来マイナス改定が続いていた診療報酬改定について、政府・与党は12月18日、次回(今年4月)の改定で本体部分を8年ぶりに引き上げることを決めた。しかし、薬価や材料などの価格(薬価部分)は1.2%引き下げられるため、診療報酬トータルでは0.82%の引き下げ。増額されるのは医療費換算でわずか約300億円にすぎず、「われわれには回ってこないので関係ない」と中小病院には諦めムードが広がっている。今後は個別項目の点数配分をめぐる議論が焦点になるが、積み残しとなっている課題も多く、その行方が注目される。(新井裕充、兼松昭夫)
 
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 診療報酬本体は2001年に初めて引き下げられたのを皮切りに、近年は引き下げ・据え置きが続いていた。

 来年度の予算編成をめぐっては、06年に閣議決定された「骨太方針2006」に基づき、社会保障関係費の自然増7,500億円うち2,200億円を圧縮するよう予算概算要求基準(シーリング)の段階で求められたため、当初は「本体マイナスは避けられない」という見方が大勢を占めていた。

 06年の前回改定はトータルで史上最大のマイナス3.16%となり、病院経営に深刻な影響を与えた。その後、07年には地方の医療機関病院が医師不足で倒産などの問題が深刻化。病院医療の崩壊が大きくクローズアップされ、「これ以上のマイナスは医療の崩壊をもたらす」という危機感が一気に広がった。

 厚労省が08年度予算案で計上した社会保障関係費は21兆6,132億円。焦点になっていた削減分は ▽健保組合による政管健保への国庫補助の肩代わり(1,000億円) ▽薬価引き下げ(960億円) ▽後発医薬品の使用推進(220億円)――などで、最終的に約2,500億円を捻出する=。2,200億円に上積みされた約300億円を本体引き上げの財源にする。

 厚労相は年明け16日に次期改定を中医協に諮問する。中医協はこれを受けて点数配分を審議し、2月中に改定案を答申。4月から新点数が施行する。

■ 今後の焦点
 次期診療報酬改定に当てる財源の大枠が固まったことで、今後は個別項目の点数配分をめぐる議論が焦点になる。

 まずは積み残しの項目を審議し、その後、点数設定の議論に入る予定。8年ぶりの本体引き上げとはいえ、確保された約300億円がすべての医療機関に行き渡るとは考えにくい。実際の点数配分次第では、「実質マイナス改定」になるケースが出てくることも考えられる。

 特に中小病院の受け止め方は冷ややかだ。A病院(一般265床)の医事課長は、「まったく期待していない」と切り捨てる。

 1. 一般病棟入院基本料
 厚労省は、中小病院の看護師不足に拍車をかけたとも言われる「7対1入院基本料」(患者7人に看護職員1人を配置)の算定を、看護必要度の高い患者を受け入れる急性期病院に絞り込む方針などを示している。

 同時に、「7対1」を算定できなくなる中小病院の救済策として、「7対1」の次に報酬が高く比較的算定しやすい「10対1入院基本料」(患者10人に看護師1人を配置)の加算を充実する方向を示している。

 日本看護協会は、昨年の医療経済実態調査でこども病院(小児医療の専門病院)が大きな赤字だったことなどから小児医療の専門病院など、「6対1」や「5対1」の看護体制に対する評価を求めている。逆に「10対1」よりも看護配置が緩やかな「13対1」や「15対1」については存続自体を危ぶむ関係者も多い。

 2. リハビリ問題
 厚労省は、回復期リハビリテーション病棟の診療報酬に成果主義を導入する方針を示している。点数に差を付ける基準として、入院患者の在宅復帰率や重症患者の入院率などを挙げている。
 しかし、埼玉県内にあるB病院(リハビリ専門)の関係者は「在宅復帰率プラス重症患者の受け入れを要求されると、患者の選別が難しい。在宅に復帰できる患者を一定程度キープしつつ、重症患者を受け入れないといけない」とぼやく。

 また、厚労省が同時に提案している「疾患別リハビリテーション料」の逓減制の廃止と早期加算については、「逓減制を廃止して点数を一本化するというが、点数が下がる方向での一本化ではないか」と不安がる。早期加算についても、「急性期リハを担当する急性期病院に手厚い改定になる。早期のリハビリに点数が付いて、その後に逓減するのだから“逓減制の廃止”とはいえない」と話している。

 3. 初・再診料の見直し
 厚労省が診療所の初・再診料の引き下げにメスを入れるかどうかが最大の焦点になる。しかし、医療関係者の間では「解散総選挙を前に日本医師会と対立するようなことはしない」との見方が有力だ。

「初・再診料の見直し」は、診療所の夜間診療を評価するための財源を生み出すために提案されていたが、診療報酬の本体部分の増額が決まったことで、両者をリンクさせる必要がなくなった。このため、「引き下げは回避された」とする見方も出始めている。


更新:2007/12/28   キャリアブレイン

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