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【長野】リニア、別ルートに戸惑いの声 沿線「経済効果、期待できぬ」2007年12月27日 リニア中央新幹線についてJR東海の松本正之社長が、南アルプスをトンネルで貫くルートを想定して整備費5兆1000億円を試算、全額自己負担で建設する考えを表明したことをめぐり、これまで別のルートを想定して建設促進を進めている県や沿線自治体に26日、戸惑いの声が広がった。 県や自治体などで構成する「リニア中央エクスプレス建設促進県協議会」が求めているのは茅野、伊那、飯田市を通るルート。県交通政策課によると、旧国鉄が提示した3ルートのうち「Bルート」と呼ばれ、1989年に意向をまとめて以来、方針は変わっていない。 今年11月28日にも同協議会や県議会議員連盟、県経済団体協議会は、国交省やJR東海に対し、Bルート採用などを盛り込んだ要望書を提出している。 表面化したJR東海の今回の構想について、同課は「正式に話を聞いていない」と当惑。「JR東海が自己負担するといっても、全国新幹線鉄道整備法の枠の中で、国の指示を受けながら地方が協力して進めていく話。誠に遺憾」と憤然とした様子。今後も引き続き、Bルート採用を要請していく姿勢を強調した。 沿線の自治体も反発を強めた。諏訪広域連合は26日、正副連合長(市町村長)会で急きょBルート推進の既定方針を確認。同連合長の山田勝文諏訪市長は「想定ルートは単なる東海道新幹線のバイパス。大都市を結ぶだけで、地方の経済効果は全く期待できない」と首を振る。小坂樫男伊那市長も「最短で結びたいという気持ちは分かるが、効率優先でいいのか」と不安ものぞかせた。 また牧野光朗飯田市長は、ルートについては従来通り関係団体と同一歩調をとる姿勢に変化はないと断った上で、「JRの具体案を見ながら、地元の悲願である早期着工と飯田駅の設置実現のために粛々と要請活動を進めていく」と述べた。 ◆県側は「茅野、伊那、飯田ルート」を要望リニア中央新幹線に関する「基本計画」が決定したのは1973年。全国新幹線鉄道整備法(全幹法)に基づき、東京都を起点、大阪市を終点に、甲府市付近、名古屋市付近、奈良市付近を主な通過地とした。 その後、運輸大臣(当時)が旧国鉄に対して、甲府市付近から名古屋市付近間の山岳トンネル部の地形・地質などの調査を指示。県内通過部分について旧国鉄は三つのルートを提示し、県側は茅野、伊那、飯田を通過するルートを要望することを決めている。 リニアの研究開発は62年に始まり、2003年には有人走行で時速581キロを記録。今年4月、JR東海は2025年に首都圏−中京圏の間で先行的に営業運転を始めることを表明した。 全幹法によると、「基本計画」に続いて国の指示による「調査」が実施される。1990年から現在までこの段階が続いており、JR東海は今年10月、南アルプス付近の地質・地質調査を行うことを決めた。しかし、ルート決定を含め、計画が具体化するのは相当の時間がかかると見られている。 国交省は、今回のJR東海の構想について「あくまで会社としての意思決定。建設費の自己負担にしても、中間駅の設置は考慮しておらず、仮定での話。課題は多い」と指摘している。
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