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社説

教科書検定 「軍関与」は復活したが(12月27日)

 太平洋戦争末期の沖縄戦で起きた「集団自決」を、教科書にどのように記述するべきなのか。

 高校日本史教科書の記述訂正申請を受けて、文部科学省が集団自決の背景に「軍の関与」があったことを認めた。

 住民に手りゅう弾を配ったことや、米軍の捕虜になることを許さなかった日本軍の指導、住民への教育などの記述も認めた。

 「軍の関与」が復活したことは、これを全面削除した今春の検定に比べ、文科省が譲歩したように見える。

 しかし、文科省が認めたのは「軍の関与」までだ。「軍の強制や命令」の記述については一切認めなかった。

 沖縄には、数多くの生存者の証言が残っている。そこから伝わってくるのは、軍が捕虜になることを許さず、自決を強いられた人もいたという軍国主義の異常さだろう。

 「軍の強制」の記述が削られた教科書で、沖縄戦の真実を若い世代に正しく伝えることができるだろうか。

 教科書検定にあたり、文科省は文科相の諮問機関である教科書検定調査審議会に検討を委ねる。その結果を受け文科省が検定意見を出す仕組みだ。

 検定審は今回、日本史の専門家から意見を聞いた。そのうえで、皇民化教育や手りゅう弾配布などの背景を踏まえて「集団自決に追い込まれた」と軍の関与を認めた。

 こうした内容は、軍の「強制」を事実上認めたことと同じことだろう。教科書執筆者や沖縄の県民が、強く復活を求めた記述でもある。

 それでも検定審は「直接の軍の命令があったとは確認されていない」として、「軍強制」を否定した。

 検定意見は変えずに体裁をとりつくろう姿勢が透けて見える。

 そもそも「軍強制」は、文科省がこれまでの検定で認めてきた記述だ。安倍前政権下で、歴史教育や教科書に批判的な政治的状況が生まれた。

 これを背景に文科省は今春、軍の命令の有無を争う裁判が起こっていることを根拠にして、「軍の強制」を削除する検定意見を出した。

 しかし、そんな理由では裁判の一方の側にくみしたことになるだろう。

 文科省は、最初の検定意見を出した根拠を明確に説明する責務がある。

 検定審の審議内容の公開も必要だ。教科書の「合否」を実質的に決める検定審の部会は、議事録すらつくっていない。審議会自体も非公開だ。

 教科書の中立性・客観性を保つのが検定制度の趣旨である。

 文科省が検定審を隠れみのにして、時の政権の意向によって教科書の記述を左右する−。このようなことは、あってはならない。

 検定に対する国民の信任を得るためには検定過程の透明化が不可欠だ。

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