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2007年12月28日

◎金沢検定を生かす ふるさとを知る努力が貴重

 先ごろ、第三回目の合格者が発表された金沢検定を、従業員教育などの一環として取り 入れる企業が増えてきたのは歓迎したい傾向だ。多くの県外客を相手にしなければならないホテルやタクシー、土産品として人気が高い商品を製造販売する伝統工芸、食品業界などでは、合格バッジを積極的に着用する動きも出始めているという。

 これらの業種以外であっても、自分たちのよって立つ地域を知る努力をすることは貴重 な体験になる。社員の「もてなしの心」や「ふるさと愛」に磨きをかけるためにも、これまで取り組んでこなかった企業も、たとえば新入社員教育に取り入れるなどして、一年後に向けて「受験促進」を考えてみてもよいのではないか。

 地元企業はもちろん、県外から進出してきた企業にもそうした姿勢を求めておきたい。 進出した地域で商売を成功させるためには、まず地域のことを知らねばならない。本業とは無関係に見える歴史や文化などを学ぶのも、商売相手である金沢の人々を深く知ることにつながり、決して無駄にならないはずである。金沢検定受験を機にこの地域について学び、この地域に愛着を感じる社員が増えれば、「企業市民」として地域貢献に取り組むエネルギーにもなるだろう。

 また、今回は子どもたちのグループ受験が増え、初級では、初めての十代の合格者も、 最年少の小学六年生を含めて四人出た。たとえば、三年生四十二人が挑戦して二人が合格した金大附属中では、金沢検定を目標として金沢城公園や兼六園での実地研修、予想問題の作成などを通じて金沢に関する知識を深めたという。金沢検定をうまく活用した「ふるさと教育」が、学校現場に浸透してきた証しと言えよう。

 残念ながら、今回は合格点に届かなかった子どもたちにとっても、合格バッジを目標に ふるさとを学ぶ努力をしたこと、普段のテストとは違う会場で大人と並んで鉛筆を走らせたことは、貴重な経験になったはずである。「生まれ育ったふるさとについてもっと詳しく知りたい」という子どもたちの意欲に火をつけるために、これからも金沢検定を積極的に生かしてもらいたい。

◎増える耕作放棄地 企業参入増やし活用を

 へき地や中山間地で生産者の高齢化と担い手不足から耕作地の放棄が顕著になっている 。石川県ではとりわけ奥能登がそうで、珠洲市、輪島市、能登町、穴水町の二市二町の合計耕作放棄地は千二百六十二ヘクタール、経営耕作面積の実に三分の一強に達している。もったいない話だ。

 政府は二〇〇五年から一般企業の農業への参入を促す目的で改正農業経営基盤強化促進 法を施行し、企業が市町村との契約で土地をリースして農業へ参入できる道を広げた。道府県もこの法律を利用した農業への参入を企業に働きかけている。

 その効果があって、金沢市の食品加工販売の会社が来春、能登町の耕作放棄地へ進出す ることになった。三・八ヘクタールをリースしてバレイショや白ネギを栽培する計画だ。七尾市の水産加工会社が今年五月、能登での企業参入第一号として能登島の耕作放棄地五ヘクタールを借りて加工食品の原料にするタマネギ、キャベツ、ニンジンなどの栽培を始めた。

 この二件を合わせても耕作放棄地全体からすると、0・7%弱にすぎない。が、能登に は血圧を下げる効果が証明されている中島菜をはじめとして沢野ごぼう、小菊かぼちゃ、能登白ねぎなどいわゆる地域ブランドの作物がいろいろある。耕作放棄を食い止め、能登が秘める可能性をさらに引き出すために企業の参入をもっと増やしたいものだ。

 奥能登の農業にも「黄金時代」があった。たとえば内浦側は、旧柳田農高の卒業生らが 結束してハウスを利用してのトマトやキュウリの栽培を北陸ではじめて成功させたほか、珠洲市では頼りになる副業としてウメ栽培を導入して成功させた。

 ハウス栽培を導入したときの話として、恩師の指導で過去三十年間の日照時間、気温な どの気象条件を調べ、冬場を除けば太平洋側の静岡県並みであることを突き止め、導入を決断し成功させたことが誇らしく語り継がれている。あの時代の勢い、進取の気風をよみがえらせたい。

 折から能登半島の特産品を共同で販売するため、海産物や農産物、伝統工芸品を取り扱 う業者らによる協同組合が来年一月にも設立される計画が進んでいる。追い風にできる新しい動きだ。


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