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社説:教育再生会議報告 総花的で説得力はない
政府の教育再生会議が福田康夫首相に報告した第3次報告は、総花的で説得力のない内容となった。6月の第2次報告に続くものだが、安倍晋三前首相の意向で設置された諮問機関であることを考えれば、存在意義自体が既に薄れているとの印象を免れない。
報告は冒頭で「学力の向上に徹底的に取り組む」とうたい、全国学力調査や経済協力開発機構(OECD)の学習到達度調査の結果を徹底的に検証し、学力改善に取り組むとした。小中一貫教育の制度化、飛び級、小学校からの英語教育、戦後の学制である6・3・3・4制の見直しなども盛り込んでいる。
しかし、再生会議に対し冷淡に見える態度の福田首相がどこまで真剣に取り組むかは疑わしい。学制改革は学校教育法の改正を伴うものでもあり、首相が指導力を発揮しなければ実現はおぼつかない。
「学力」については、その在り方や実態の分析に文字通り徹底的に取り組んでもらいたい。文部科学相の諮問機関である中央教育審議会は先月、これまでの「ゆとり教育」から学力重視へ大きくかじを切る「審議のまとめ」を決定した。
ところが学力のとらえ方はあいまいだ。学力重視への転換の背景にはOECD調査での成績不振があるが、同調査は学んだ知識の実生活への応用力を評価するものであり、知識の詰め込みよりもゆとり教育に通じるところがある。そう考えれば報告にある学力とは何を指すのか判然としないのだ。義務教育段階での飛び級や小学校からの英語教育などの提言をみても、再生会議がどんな知的レベルを求めているのか、教育現場も子どもたちも戸惑うのではないか。
焦点の道徳について報告では「徳育」としての教科化を盛り込み、点数で評価はしないとした。これには再生会議の「生い立ち」が絡む。安倍前首相は道徳教育を取り入れた復古調の教育改革を目指し、再生会議を創設した。一方、学習指導要領の改定作業を進めている中教審の見解は異なる。道徳は成績評価の在り方など教科化には障害が多いとして、来年1月に行う答申では言及を見送る方針を固めながら、答申素案では再生会議に配慮して明確な方向性の提示を避けた経緯もある。
教科化は、国による特定の価値観を子どもに押し付けることになりかねない。中教審が教科化に異論を唱えるのは、教育へのそんな政治介入を疑問視したからであろうし、当然のことでもある。道徳への国の関与は、首相の交代で状況が変わる弊害も示すことにもなった。
道徳性は教え込まれて身に付くものではなく、家族や友達、周囲の大人たちと接する日常の中で培われる。報告には社会総がかりで徳育の充実に取り組むとあるが、上滑りの感が強い。子どもたちにとって深刻な問題であるはずのいじめ、不登校などについては一般的な記述にとどまり、熱意が感じられないのはどうしたことだろう。
再生会議の目的は省庁を横断して教育振興に取り組むことにあったはず。総花的な提言でなく、いっそのこと教育予算と教員確保に的を絞る手もあろう。
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