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社会

在日朝鮮人抑圧の歴史刻む身分証 男性が保管 西宮

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保管されていた許元述さんの協和会手帳=西宮市内

 太平洋戦争中、在日朝鮮人が携帯を義務付けられた「協和会手帳(協和会会員章)」を、西宮市の在日二世の男性が保管していることが二十六日、分かった。戦後、抑圧の証しとしてほとんどが破棄され、現在確認できるのは全国でも数点だけ。専門家は「在日朝鮮人の歴史を調べる上で第一級の資料」と評価している。(坂本 勝)

 西宮市甲子園口六の許用皓(ホヨンホ)さん(68)が、父許元述(ホウォンスル)さんの遺品として自宅に保管していた。手帳は縦一〇・五センチ、横八・三センチで三十ページ。茶褐色の表紙に協和会の印と会員章の文字が刻まれ、中には会員の顔写真と家族欄、職業欄などを載せていた。「我等ハ皇国臣民ナリ忠誠以テ君国ニ報ゼン」と記した「皇国臣民ノ誓詞」、「本章ハ大切ニ携帯シナケレバナリマセン」などと書いた「会員章所持者心得」、「君が代」の歌詞もあった。

 元述さんは一八九九(明治三十二)年生まれで二十八歳で来日。西宮の山村製壜所(やまむらせいびんしょ)の馬車引きとして働いた。一九三九(昭和十四)年に西宮協和会から会員章を交付された。四一年に手帳の本名欄に赤線が引かれた。妻子とともに日本名に創氏改名させられたことを示すという。

 二男の用皓さんは「苦難の一生を過ごした父の生きた証しを焼いてしまうのはしのびなかった。貴重な手帳として後世に過去の歴史を伝えたい」と話している。

貴重な歴史資料
 高麗博物館(こうらいはくぶつかん=東京都新宿区=)館長で在日朝鮮人運動史研究会の樋口雄一代表の話

 戦時中、在日朝鮮人は協和会手帳を持っていないだけで警察に引っ張って行かれた。携帯を強制された在日朝鮮人は戦後、手帳を焼いたり、捨てたりしたケースがほとんど。朝鮮人抑圧の証拠として貴重な資料だ。

 協和会と協和会手帳 1939年、日本で暮らす朝鮮人全員を対象に全都道府県でつくられた官製団体。「内鮮一体」のスローガンの下、「日本人」にみなされた朝鮮人にだけ手帳の携帯が義務付けられた。警察が事務を担うと同時に治安対象とした。手帳には国防献金などの記録欄もあり、愛国心を測る尺度とされた。

(12/27 09:29)

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