ミクちゃんのフォルティスにより使徒が蘇ると、ラルドゥラが帰ってきた。
俺たちはイヴィルの家に置いてきたメルとルビィさんを迎えにいった。
イヴィルに礼を言って別れると、俺たちはアシェルフィの家に帰り、仲直りをした。
それを見計らったかのように、アクタカが現れた。
厚かましくも食事中の居間のテーブルに現れたアクタカは、テーブルの上を歩きながら、睨み付ける俺たちを見下ろしていた。
アクタカ「元の鞘に納まったということか、アルシェの使徒諸君」
セレン「もう騙されねぇぞ、おしゃべりな悪魔め」
「騙す?私はお前たちを騙したことなどない。お前は世界の歪み。テームスの復活を解いた。その事実に変わりはない。使徒らよ、それでもこの少年を恨まずにいられると?」
オヴィ「そのとおりだ」
迷わず答えるオヴィ。アクタカはぴくっと眉を上げた。
「だが、この少年はアルシェの使徒ではないのだぞ」
リュウ「そりゃそうでしょうねぇ。なにせルシーラは使徒には勘定しないのですから」
アクタカは顔をしかめて押し黙った。
リュウ「騙したことがない……ですか。嘘はつかわなったかもしれませんが、人を誤った方向へ誤解させましたよね。それは騙す以外のなにものでもない。嘘ではないが、貴方は我々を騙しました。セレンはルシーラ。そしてルシーラは使徒ではない。ついでにいえば、12使徒はセレンを除いた分、もう一人いるということです」
アクタカ「お前……どこでそれを……」
リュウ「親切な水晶さんが――ね」
リュウは言うが早いかアクタカを居合いで斬り捨てた。
腕を切り飛ばされたアクタカは悲鳴を上げて逃げ去った。
ギル「追うぞ」
窓を破って逃げたアクタカを追う。
アクタカはものすごい速さで飛んでいった。俺たちは即座に追いかけた。
追うのもうんざりするくらいの時間が流れた後、ついに俺たちはテージュ海の上まで来てしまった。
ついに観念したのか、アクタカが海上で静止する。
セレン「観念したようだな」
「くくっ……何を言っている。私がなぜここに来たか分かってないようだね、世界の歪み」
「その呼び方、止めろ」
アクタカは残った右手で長い杖を振ると、なにやら呪文を唱えた。海に向かって魔法を投げかける。
「……なんだ?」
しかし何も起こらない。俺たちは顔を見合わせる。
「おい、何をした」
「くく……これでアルバザードは終わりだ、世界の歪み」
「??」
俺たちが用心深く海を見ていると、海面が揺れ、大波が起こり、割れ目ができた。
「なっ!」
そしてその割れ目の中から赤い色をした巨人が現れた。
オヴィ「おいおいおい、なんだよあいつは!」
クリス「アンタよりでかいわねぇ」
オヴィ「1万倍くらいな!」
突如、海の中から巨人が現れたのだ。どう見ても海の深さより大きい。どこからやってきたのだろうか。地下から?あるいは海底で寝ていたのが立ったとでもいうのだろうか。
答えは分からない。だが緊急事態だというのは確からしい。
セレン「皆、ひとまず逃げるぞ」
リディア「え、逃げちゃうの!?カテージュの人、死んじゃうよ!」
「まずはこいつの戦力を分析しなきゃ俺たちがやられる。俺たちがやられればカテージュどころかアルナも終わりだ」
リディア「……わかった」
巨人が手を伸ばす。右手を上にあげると、その大きな手のひらから天に向けてユノを放つ。
「これでアルバザードは終わりだぁ!くくくく……あーっはっはっは!」
しかし巨人のユノは高笑いをしていたアクタカを照射した。
「な……なぜだぁ!」
あからさまな用済み感とともにアクタカは消し飛んでいった。
リュウ「とりあえず相手の戦力は分かりましたね。あれを陸にあげたら終わりです」
パール「やはりカテージュに入る前に食い止めましょう!」
セレン「武器をしまえ。あれに切りかかっても意味がない。全員でヴィードを放て。それで倒すしかない」
使徒「了解!」
俺たちは意識を集中すると、ヴィードを高め、ユノを照射するかあるいは魔法を撃つか、いずれか得意な方で巨人を攻撃した。
全力でヴィードを照射すると、巨人は世界中に響きそうな声をあげ、動きを止めた。その後、反撃としてユノをあたりに照射した。
フルミネア「危ない!」
ユノの量が先天的に極めて多いフルミネアがとっさにバリアを張って全員を守った。
セレン「あぶなかった……今の反撃を食らったら俺たちも消し飛ぶところだったな」
リディア「それにしても全員の一撃をくらっても死なないなんて……」
と言いかけたリディアがくらっとしたので俺はとっさにその体を抱いた。
「おい、大丈夫か!」
「へーき。ちょっとふらふらしちゃっただけ……」
巨人はカテージュへ向けて歩き出した。リュウは何か小さな機械で巨人を測っている。
ギル「おい、なんだそれ」
「速度を計算しているんです。……セレン、今のままでは巨人はあと6時間でカテージュに上陸します」
「6時間……か」
リュウ「しかも、それはあくまでこちらが攻撃を続ければの話です。攻撃をやめれば進行速度は上がり、数時間で上陸する計算です」
「まいったな……」
オヴィ「どうする、セレン」
クリス「また皆で撃ってみる?」
「いや、相手のダメージは確認できた。問題は俺たちの体力が続かないことだ。だからって攻撃の手を緩めるわけにいかない。そこで、これから第2波を撃つが、体力の残っているもの6人だけ集まるんだ」
クリス「6人?」
「あぁ、まず6人が撃つ。その間残りの6人は休んでおく。そして巨人が攻撃から回復して速度を速めたころを見計らって、休んでいた6人が撃つ。その間に最初に攻撃をした6人は休んでおく。これで攻撃をし続けたまま6時間稼げる。これが攻撃回数を最大にしながら時間を延ばす唯一の手段だ」
ザナ「4人3部隊じゃだめかな?」
セレン「あいつの動きを止めるには6人はいると思う」
ザナ「だよな……」
セレン「また、6人のうち1人は反撃のユノから6人全員を守るためのバリアを張る。攻撃はするな。バリア用に力を使え。1人はフルミネア、もう1人は……そうだな、俺がやる。はじめの6人を決める。俺側の5人、来い」
以後、アルシェの使徒はこの作戦で巨人を攻撃し続けた。巨人は体力はあるが知能はないようで、ひたすら同じ手段を喰らい続けた。
だが巨人は固く、倒せるかどうか不安になってきた。しかし、倒すしかないのだ。
巨人はもうテージュまで迫ってきた。
オヴィ「まずいぜ、セレン。向こうも相当へばってるが、次で倒せなきゃ上陸されちまう。12人全員で撃とうぜ」
クリス「けど、それで倒せなかったらそれこそ次がないわよ」
俺たちは焦っていた。
セレン「リュウ……どう思う?」
「相手の体力が分かりません。どちらが良いか言い切れません。もう、運に頼るしか……」
「お前がそういうくらいじゃ本当に運頼みなんだろうな。よし、じゃあこうしよう。オヴィ、コインを貸せ」
「おう……って、お前まさか……」
フルミネア「テージュなだけにテール任せって言うんじゃないでしょうね……」
セレン「まぁそんなとこだ。表が出たら全員で攻撃。裏が出たら今までどおり6人でだ」
リディア「……わかった……時間、ないもんね。運命に従うよ」
ピンとコインを弾いた。コインは海の生暖かい風に吹かれながら俺の手のひらに落ちた。
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