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病院経営:診療報酬抑制続き、医師不足も深刻…企業ノウハウで改善

 診療報酬の抑制や、医師、看護師不足が、医療機関の経営を圧迫している。九州・沖縄では今年、7医療機関が経営破綻(はたん)し負債総額は40億円を超えた。地場銀行は医療機関の経営支援に力を入れ、企業ノウハウを得て経営改善に取り組む病院も出てきた。医療機関も“算術”抜きでは継続が難しくなってきた。

 少子高齢化で拡大する社会保障費を抑えるため、国は医療費削減を進めてきた。診療報酬の「本体部分」は来年度、8年ぶりに引き上げられる見通しだが、据え置き、引き下げが続いてきた。治療の必要性が低い長期入院患者の診療報酬が06年度から引き下げられ、減収する病院が相次いだ。患者1人あたりの看護師数が多いほど報酬が高い仕組みも導入され、看護師不足も経営を圧迫する。

 東京商工リサーチ福岡支社によると、九州・沖縄の医療機関の経営破綻(負債1000万円以上)は今年1~11月に7件発生し負債総額は昨年1年間の14倍の46億円。中規模病院の法的処理が目立ち、負債が大きくなる傾向にある。

 病院コンサルティングの麻生(福岡県飯塚市)によると、医療機関の経営支援や運営委託の依頼は昨年から急増しているという。滝中秀敏取締役は「今後も経営環境の厳しさは変わらないだろう」と指摘する。

 福銀や西日本シティ銀行などは、病院への出向経験を持つ行員らでつくる専門チームを置き、支援体制をとっている。九電工などがつくる財団法人は05年以降、福岡県立の2病院の運営を受託した。西シ銀は「今後はファンドを活用した再生など、企業同様の経営手法をとる病院が増えてくる。企業再生のノウハウを生かしたい」と話す。【柳原美砂子】

 ◇合理化へ中期計画

 「今期の利益目標は達成できそうですね」。鹿児島市の今給黎(いまきいれ)総合病院。昇(のぼり)卓夫院長とメーンバンクの福岡銀行の担当者がうなずき合った。

 23の診療科と450床を持ち、地域救急医療の中核的存在。だが、病床稼働率の低下で減収傾向が続いた。昨年7月、病院ではまだ珍しい中期経営計画(5カ年)に着手した。

 薬剤仕入れ代やエレベーター保守管理費などを見直し、手術の準備作業も外注化。事務職員は自然退職や配置換えで130人から80人まで減らした。患者数やオペ件数、平均在院日数などの目標を設定し、医師や看護師、総務など各部署の幹部が毎月の会議で進ちょくを確認する。昇院長は「医療だけしていれば利益が上がったのは昔の話。医療の質を高めると同時に、制度改定に合わせた素早い経営判断が求められる」と話す。

毎日新聞 2007年12月27日 西部朝刊

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