なんとも冷徹な表情の人だ。米誌「タイム」は、年末恒例の「パーソン・オブ・ザ・イヤー」(今年の人)にロシアのプーチン大統領を選んだ。
ソ連崩壊後、ロシアを再び大国のテーブルに戻した指導力を評価したという。来春の大統領後継候補に腹心の第一副首相を指名し、自らは首相に就任して院政で権力を振るう構えだ。専制君主(ツァー)の誕生と皮肉られてもいる。
表紙に大写しにされた大統領の顔写真は、にこりともせず、こちらを見つめている。心の奥まで見通せそうな鋭い目つきである。世界の指導者との記念写真を見てもプーチン大統領だけは、ほとんど表情がない。
ロシア人は、意味なく公衆の面前で笑わないと、旅行のガイドブックに書いてあったが、大統領の場合は意識的な感じを受ける。冷静で頼りがいのある指導者像を国民にアピールしているのだろう。
エリツィン前大統領が、突如辞任したのは一九九九年の大みそかだった。権力を受け継いだプーチン大統領は、石油輸出による黒字で国内経済を発展させ、国民生活を向上させた。
しかし民主主義は後退し、マスコミ規制は逆に強まった。政府内部では汚職がはびこり、権力闘争は激化している。大統領の無表情の裏には、意外な悩みが隠れていそうだ。院政が専制政治の復活になるのか、来年も大国化するロシアに関心が集まる。