イラクでは米軍とイラク政府による治安の回復作業がさらに大幅に前進しているようです。
イラク情勢のそうした好転はこのサイトでもすでに数回、伝えてきたとおりですが、その治安の改善がさらに顕著となってきたのです。
この情勢の好転は一時的かもしれません。
血なまぐさいテロ攻撃はまた頻発するかもしれません。民族間、宗派間の闘争に再び火がつくかもしれません。
さらにまたイラク全土が一挙に安全になってしまった、というわけでもありません。局地的にはテロ攻撃や宗派間の衝突がまだ起きているところもあります。北部のクルド人へのトルコからの攻撃も、従来とは異なる要因とはいえ、不安定の原因となっています。
(上は以前に紹介したイラクで活動するフリーのマイケル・ヨン記者が撮影した写真です)
しかしそれでもなおイラク全体として半年前、一年前とくらべてテロ勢力の攻撃が減り、米軍将兵やイラク民間人の死傷者が減り続けていることは、どうにも否定ができません。このイラク情勢の好転はアメリカでブッシュ政権の対イラク政策に反対してきた民主党側でも認めています。
そしてマスコミではブッシュ政権のイラク平定作戦に最も激しく、最も一貫して反対するキャンペーンを展開してきたニュヨーク・タイムズでさえも、いまのイラクの治安回復を何度も、かつ多角的に報じています。その一例を紹介します。
12月22日付のニューヨーク・タイムズに掲載された「イラクの現状」というグラフを主体とする記事です。筆者はこれまた反ブッシュの民主党リベラル系シンクタンク「ブルッキングス研究所」のマイケル・オハンロン上級研究員らです。オハンロン氏は安全保障の若手研究学者で、アメリカのマスコミに広範に研究成果を発表しています。
その記事のグラフ部分が下記のとおりです。一年前との比較が主体です。
情報源は米国防総省、イラク政府、国際機関などだそうです。
2006年11月 2007年11月
暴力によるイラク人死者数 3,450 650
米軍将兵の死者数 69 40
イラク治安部隊の死者数 123 89
1日平均のテロ・宗派攻撃件数 180 80
死者を出した爆発件数 65 22
石油生産(1日のバーレル) 210万 240万
以上、主要なデータだけです。
この数字をみると、オハンロン氏らは国防総省の発表よりも、「情勢好転」を控えめに測定していることが明白です。 それでもなお「イラクの安全環境はかなり向上した」と評価する一方、政治的な和解はまだだし、治安もまた悪化の道をたどる可能性があることを付記しています。しかしいまのイラクの情勢が好転していることは正面から認めているわけです。
朝日新聞はニュヨーク・タイムズと提携しながらも、イラク情勢のこうした、いま最大の特徴はツユほども報じていません。むしろ「イラクの治安は悪化」などと大ざっぱな記述を繰り返しています。
まあ、アメリカの対イラク政策に激しく反対し、その効用をすべて否定してきたのですから、それが万が一にも、「成功」していまうことなど、あってはならない、ということでしょうか。そうした態度が砂に頭を突っ込むダチョウと同じでなければ、幸いです。
http://komoriy.iza.ne.jp/blog/trackback/432332
2007/12/25 19:13
こんにちは。
朝日の夕刊(大阪版)をみますと、あす26日、大阪高裁で故小田実氏がおこした自衛隊イラク派遣違憲訴訟の控訴審があることを大きく取り上げてをりました。見出しに「9条判決 天で待つ」、さらに記事脇のコメントでは早乙女勝元氏が「(裁判官にたいして)小田氏の思いくみとって」……。朝日としては海自や陸自の成果があり、それがいまの治安回復に貢献してゐる、などとは書けませんからね。で、そもそもイラク戦争は悪だ、日本の派遣はけしからん!と教条的に吠えてるだけですね。イランの核も、アメリカの軍事行動の影響がおおいにあるんではないでせうか。あらためて平和をもたらすのは軍事力だと感じます。天下の朝日樣がのたまふごとき「平和勢力」が平和をもたらすことはない、といふ証明でもありませうか。朝日にとってアメリカや自衛隊などの軍隊の活動によるイラクの平和回復はほとんど眼中にないか、むしろ悪化を期待しとるんでせう。…あ、例外がありますね。人民解放軍によって周辺の自治区に平和をもたらしてゐる中国様はスバラシイんでしたね。
2007/12/25 20:38
こんばんは?
古森さん、この記事ですよね。
http://www.nytimes.com/2007/12/22/opinion/22ohanlon.html?_r=1&oref=slogin
どうみても、古森さんがいうような
>ニュヨーク・タイムズも報じたイラクの治安の大幅回復
という、イラク駐留米軍賛美の記事ではないと思いますよ(笑)。
Iraq’s security environment is considerably improved, with security at its best levels since early 2004. This is largely thanks to the surge-based strategy of Gen. David Petraeus and the heroic efforts — and sacrifice — of so many American and Iraqi troops and police officers (more Americans have died in Iraq in 2007 than in any previous year, though death rates have dropped greatly in the last few months). But Iraq’s political environment and its economy are only marginally better than a year ago.
イラクの治安環境はかなり改善した。これはペトレウス?将軍の「躍進戦略」によるアメリカとイラクの軍隊、そして警察官の多大な犠牲と引き換えに得られたものだ。(2007年は例年以上の犠牲者を数えたものの、ここ数ヶ月では犠牲は急減した)。治安は改善したものの、政治的経済的環境は1年前と較べて辛うじて少しよくなったに過ぎない。
(中略)
いつ壊れるか分からない宗教間のバランスと脆弱な国家制度のなかで、この小康状態が続いているめったに無いチャンスを逃さず、駐留米軍を撤兵させてしまうことも、”アリ”かな?
といってるのでは有りませんか?
2007/12/25 21:06
イラク戦争とは、米国の一人芝居のようなところがあって、ところどころでヒーローは大活躍するのだが、見終わるまでは、うかつには賞賛しにくいということですね。
もちろんハッピーエンドならば、先見の明があるということでしょうが。
2007/12/25 21:13
古森様
休日にもかかわらず、記事を有難うございます。
こうなってくると、今後の内政面にどのような展望を持って手を打っているのか、知りたくなってきますね。
ni0615様
*古森さんの記事は、「朝日新聞がこの内容をどう報道するか」が主旨であって、「イラク駐留米軍を賛美すること」が主旨ではないように読めますが、違いますか?
2007/12/25 22:15
こんばんは。
古森様
いずれにしても良いことですよね。敢えて難しく考えたり推測する必要は無いと思います。悔しいヤツも居るようですが、現実を見つめ人間、素直が一番です。
2007/12/25 23:54
To staroクン
もとの記事を読んだかね?
>年の瀬になっても
え? 何が差別で、何が中傷だって?
>親は給食費を踏み倒して育てたのだろう。
そうか、キミがそうだったのか
2007/12/26 00:02
ni0615
読もうが、読むまいが差別が目的の君には意味がない。
慰安婦問題に懲りず、沖縄自決まででっちあげるその卑しさ。
君はここになんの目的で出てくるんだ?
そんなに日本が右傾化するのが怖いなら、愛する金 正日の所へ
帰化してしまえ、パラサイトめ。
2007/12/26 00:04
2007/12/26 02:47
>朝日新聞はニュヨーク・タイムズと提携しながらも、イラク情勢のこうした、いま最大の特徴はツユほども報じていません。
アサヒコムでちょいと検索したんですけれど、
<引用開始>
asahi.com:米軍増派による治安改善を強調 米国防長官イラク訪問 - 国際
http://www.asahi.com/international/update/1206/TKY200712060348.html
AFP通信によると、ゲーツ長官は会見で「イラク全土の治安状況に劇的な変化があった」と述べ、(1)テロなどの件数が過去2年間で最少レベル(2)帰還難民の増加(3)アルカイダ系過激派掃討のため7万人のイラク人が米軍と共闘――などの成果をうたいあげた。
asahi.com:イラク首相「最後のお願い」 多国籍軍の再延長採択 - イラク情勢
http://www2.asahi.com/special/iraq/TKY200712190328.html
だが今年は米軍の増派作戦や、イラク人による反アルカイダ闘争、シーア派強硬派勢力の沈静化などで治安が改善。マリキ首相は今月、安保理議長に出した書簡で最後の要請と明示した。
<引用終了>
ツユぐらいというのがどれくらいかは分かりませんが、治安改善は報じてるようですね。
2007/12/26 08:40
char さん
平和を守るための抑止を支える軍事力の効用を朝日新聞らは認めたがらない、わけですね。
「平和のためにはソフトパワー、話し合い、外交努力」といい、「軍事力だけでは平和は守れない」と主張します。
誰も「軍事力だけで平和は守れる」とは述べていないのに。
では逆に「ソフトパワーだけで、軍事力まったくなしに平和を守れるのか」と問うと、話題がいつのまにか変わっている。
こんなプロセスを3000回はみてきたでしょうか。
イランが2003年に核兵器開発を少なくとも一時的に断念したらしいという米側の情報についても、アメリカのイラクでの軍事力行使で怯えたからだ、という解釈がいまも米側にあります。
2007/12/26 08:49
truth-of-truth さん
うかつには賞賛しにくい。
その通りですね。
ただ2点、
ひとつは、イラクの平定と民主化は日本も国をあげて、賛同した基本政策です。(民主主義ですから、いつでも反対意見はありますが)
二番目は、いまの米国主導のイラク民主化が完全に失敗すれば、日本にも必ずマイナスの影響が及ぶという基本認識です。
2007/12/26 08:59
mimisam さん
こんごの内政面への影響、イラクの内政、アメリカの内政、両方への波及が注視されますね。
予断は許しませんが、これまでと異なる状況がいまこの瞬間、生まれていることは否定できません。
2007/12/26 09:02
くぼた さん
悔しいというか、とにかくイラクがテロ勢力に席捲されて、国家として崩壊してしまうことを切望する人たちが日本にもいる、ということですね。
アメリカの失敗ならなんでも、大喜びという反応と表裏一体の政治メンタリティーだと思います。
2007/12/26 09:07
staro さん
いやあ、鮮やか、快刀乱麻ですね。
マニュアルブックに記録したい模範例のようです。
話は変わりますが、以前にstaroさんが、ここに出てくる変種系は、単に自分のブログに人を呼び込みたいことがその最大動機だという趣旨を指摘されていましたが、さかのぼって、なるほど、なるほど、と思っています。
こういうのをまさにdelayed reaction(私の)というのでしょうね。
2007/12/26 09:34
古森様
おはようございます。
>悔しいというか、とにかくイラクがテロ勢力に席捲されて、国家として崩壊してしまうことを切望する人たちが日本にもいる、ということですね。
アメリカの失敗ならなんでも、大喜びという反応と表裏一体の政治メンタリティーだと思います。
ご指摘、本当にこの点については愚かなことだと思っています。
理由はどうあれ、まずは現在のイラクの安定、イラク国民の繁栄を願うべき
であって、安定したら都合が悪いなど論外と思います。
それから米国はたまには失敗した方がいいと思いますが、大きすぎる失敗は
日本のみならず、世界の混乱を招くと思います。
人間社会は誰であれ、必ずリーダーをたてて、その者たちの決断に従い
団結することで古来より繁栄してきたはずですね。
個人主義や孤立主義を選んだ結果、類人猿からは別の道を歩み、破滅した
共通の祖先がいました。
悪口程度でやめておくのが一番だと知るべきですね。(笑
2007/12/26 13:21
イラクがようやく安定化に向かいつつある、というのはアメリカのみならず世界にとって歓迎すべき出来事ですが、アメリカはここまで来るに当たってあまりに多くの代償を払ってしまった感があります。その中でも、アメリカが支払った最大の代償は、国際社会における中国の必要以上の台頭を許してしまったことではないでしょうか。北朝鮮、イラク、さらにはサブプライムに至るまで、本来長期的な視点からは仮想敵国ナンバーワンである中国の顔色を伺わなければ何も出来ない、そんな国になりさがってしまいました。
その結果、いつか古森さんが紹介された小説「SHOWDOWN」が現実化するんじゃないかという不安を覚えるような出来事が今年はいくつもありました。東アジア最大の同盟国である日本の利益を全く無視したような昨今の対北朝鮮外交、下院における従軍慰安婦非難決議に対する傍観、そして自分が住んでいる台湾については、民進党と陳政権に代表される台湾の自立を志向する勢力に対する、あたかも北京の発言のような非難中傷、さらには来年3月の総統選への露骨なネガティブ・キャンペーンなどキリがありません。本来最も親米的な日本と台湾の国益を犠牲にして、アメリカは中国のご機嫌取りに汲々としているのではという印象すら受けます。
歴史を語る際「たら」「れば」は禁句なのは承知していますが、アメリカがイラク戦争をしなければ、中東の泥沼にはまることなく、よりまともなアジア政策が採用されたのではという思いは、イラク情勢の好転というニュースを聞いても消えることはありません。確かに、アメリカが「これ以上の」泥沼にはまらないという点ではプラスではありますが、遅きに失した感があり、とても喜ばしいとは思えません。アメリカにとって、このイラク戦争はやはり差し引きするとマイナスの方がはるかに大きかったのではないでしょうか。
2007/12/26 18:03
staro さん
ご指摘のとおりです。
ただし日本では小沢一郎氏のような公人を含めて、アメリカの悪口なら、なにを言っても許されますよね。じゃあ、同じ次元のことを、同じような表現で中国に対しても、言ってみろ、と思うことがよくあります。
2007/12/26 18:07
sierramaestra さん
台湾に住まれて、アメリカの言動をみていると、腹が立つ、ということ、よく理解できます。
ごく最近のライス国務長官の台湾批判など、とくにけしからんですね。
しかしアメリカには議会の共和党を中心に台湾支持の強い勢力はまだまだ存在します。そういう人たちは、台湾自身が防衛などで十分に行動をとっていないという不満を抱いています。
アメリカの台湾への態度がイラク関与のせいだという因果関係は、やや疑問があります。それに、イラクがあのままサダム・フセイン政権下にあり、国際社会を恫喝し続けた場合と、その危険な政権が除去された現状とのプラスマイナスの決算はきわめて複雑ですね。
2007/12/26 22:33
この先もし治安が安定し、議会制民主主義がイラクに根付いたとしたら画期的でしょう。
というのは『アンチ・オイディプス』(ドゥルーズ=ガタリ)では、部族社会から国家へ歴史が発展・移行していったという立場を取らないからです。両者は初めから平行してあった、国家の成立はその国家を拒否する社会(部族社会)をも作り出したと考えられているからです。また二種類しかないと云っているからです。
その発生過程は誰も目撃してはいない、のでその信憑性は証明されないかと言えば、そうでもなく、大きな変動期にはその片鱗が現れる筈です。
どんな形でなされたにせよ今のイラクは大きな社会変動のただ中にあることは確かです。
問題はアメリカの軍事力抜きで今後どうなるのか、でしょうが、日本(部族社会でなかったので混乱は最小限で済んだ)も似た立場・占領を経験し、部族社会を残したままで民主主義国家が果たして根付くのかは国家と部族社会との関連でも非常に興味深い歴史的課題です。
外部からの、力づくで、がその条件だとしたら、戦後・占領下での出血も要る訳で、アメリカが部族社会の解体まで狙っているのかどうか(日本の天皇を中心とした国家が部族とは別次元であったとしても、象徴として残されたことなどを思うとさらに)、考えさせられる問題です。
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