かつては息子の「薬物パーティー」に、その後は霊感商法の拠点に使われた元三田邸=20日 |
神奈川県警警視が関与したとされる霊感商法企業「神世界」(山梨県甲斐市)に強制捜査のメスが入った。癒やしや霊感ブームに乗って若い女性ら数千人から100億円以上を集めたとみられるが、「ヒーリングサロン」と称してセレブ気分が味わえる高級マンションや邸宅に被害者たちを誘い込んでいた。その舞台となったのは女優の三田佳子さん(66)のかつての自宅で、覚せい剤使用で3度も逮捕された二男(27)が「薬物パーティー」を開いていた因縁の豪邸だった。
東京都世田谷区深沢の閑静な住宅地。ベンツやBMWが駐まる豪邸が並ぶ。中でも目につくコンクリート造りの400平方メートルほどの邸宅が元三田邸で、「びびっととうきょう深沢サロン」の名称で神世界の勧誘の舞台に悪用されていた。
この地下室は三田さんの二男で歌手の高橋祐也被告が、友人らと覚醒剤パーティーを開いていた場所だ。このため三田さんは自宅を手放し、転居。そこにすかさず入り込んだのが神世界だった。不動産関係者は「土地だけで5億円はするんじゃないか」と推定する。
近くの男性(65)は「身なりのいい20−30代の女性ばかりが頻繁に出入りしていた。英会話教室でも開いているのかと思ったが、出入りの時間がまちまちなうえ、いつも静かで不審に思っていた」。高さ約2.5メートルの塀に囲まれ、中の様子はうかがい知れない。
神世界の被害を告発するサイトによると、地下室は食事スペースに使われ、「アトピーやアレルギーの子供も安心して食べられる食事を提供する」と若い主婦を集めていたという。
近くの主婦は「三田さんが住んでいたころは若い子らが騒いで出入りしていた。それがあんなことになり今度は霊感商法。何か呪われているの…」と話す。
被害相談に乗る渡辺博弁護士は「神世界が舞台装置に使っていたのが高級マンションや豪邸。芸能人宅だっただけに、だまされた人も多かったのではないか」と話す。
関与が指摘される吉田澄雄前県警警備課長(51)が名義人となっていたのも東京・赤坂の一等地に建つ芸能人たちが住むマンションだった。
神世界被害対策弁護団によると、最初は1000円の体験ヒーリングや占いで引きつけ、「霊視鑑定」で「悪行をした先祖が取りついている。今何とかしないと!」と脅し、「力」と大書した紙入りのお守り袋(力(ちから)ライセンス)を10万5000万円で買わせる。
1万500円の「神書」と称する教典には「人類が初めて授かった神様からの品で、本来1冊1兆円以上だが、最低価格に設定」との後書きが。除霊のための玉ぐし料などとして金を吸い上げ、中には1000万円以上だまし取られた主婦もいた。
紀藤正樹弁護士ら弁護団は江原啓之、美輪明宏両氏が出演する「オーラの泉」や、細木数子氏出演の「ズバリ言うわよ!」などの番組を挙げ、「ヒーリングサロンの被害はここ1、2年で激増した。霊感を断定的に放送する番組の影響は明らかにある」と安易な霊感ブームに警鐘を鳴らしている。
ZAKZAK 2007/12/21