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公明新聞:2007年12月24日

「徳育の教科化」の問題点
特定の価値観押しつけに
教員養成や成績評価も非常に困難

問い

 政府の教育再生会議は第3次報告で「徳育の教科化」を提言すると聞きました。一方、この提言について公明党は慎重な対応を求めていますが何が問題なのでしょうか。

 (東京・足立区 Y・Mさん)


党教育改革推進本部事務局長
山下 栄一 参院議員

 政府の教育再生会議は25日、第3次報告で小中学校の現在の「道徳」の時間を「徳育」に変え、数学や国語と同じように「教科化」し、徳育の教科書作成などを提言する予定です。これに対し、公明党の文部科学部会が11月16日に、「徳育の教科化」に慎重な検討を求める福田康夫首相あての申し入れ書を町村信孝官房長官に提出したのをはじめ、これまで一貫して政府に慎重な対応を求めています。

 「徳育の教科化」の何が問題なのでしょうか。一つ目の理由として、昭和26年に教育課程審議会で示された「道徳教育は学校教育全体の責任である」「道徳教育を主体とする教科、あるいは科目を設けることは望ましくない」という答申があります。この答申は引き続き堅持されるべき大原則です。教育再生会議の提言はこうした原則に対する根本的な変更であり、仮に変更するなら教員や保護者を納得させる総括と検証が必要です。私たちは、なし崩し的な政策変更には反対です。

 その上で、「教科化」には三つの問題点があります。第1は教科書を作成することの問題です。日本の教科書は政府が検定しますので、国が子どもたちに特定の価値観を押し付けることになります。そもそも検定制度は、民間の出版会社発行の教科書を、主に学問的見地から第三者機関としての検定審議会が行うものです。同審議会が価値観にかかわる検定意見を付することは不可能です。

 第2は教員免許の問題です。教員養成課程の認定も教員資格付与も権力的な行政行為です。多様な価値観にかかわる道徳に対し免許制度、特に教員免許制度を付与することは相いれないものです。

 第3は成績評価の点です。教科には成績評価が伴います。道徳の客観的な評価は困難です。以上のような点から徳育の教科化は教科の本来の性格上、成立しにくいものです。

 現代は何が本物で何が偽物か分かりにくくなっています。牛肉や和菓子の食品表示偽装、建物や建材の設計偽装、テレビ番組の報道偽装、偽メール問題の国会質問偽装、蔓延する振り込め詐欺など日本全体が偽装社会といわれます。

 大人社会そのものが自省の心を失い、他者への配慮や同苦する心を失っています。大人自身が自らを省みないで、どうして子どもに道徳を教えることができるでしょうか。道徳教育を叫ぶ前に大人が自省することから道徳教育が始まるのではないでしょうか。

 公明党はかねてから、子どもの豊かな心を育てるために、体験学習の重要性を主張し、学校教育、社会教育における自然体験、職業体験、読書体験、奉仕体験活動などを推進してきました。バーチャル(仮想)体験が広がる一方の現代で、人や自然と直接触れ合う機会を増やすことによって倫理観を育てることが大事です。過日の福田首相への申し入れでも、体験学習、体験活動への財政支援を要望しました。

 また、道徳教育には学校はもちろん、家庭、地域社会の協力や連携が重要です。2008年予算の財務省原案で「学校支援地域本部」(仮称)の創設が盛り込まれました。いじめ、不登校の増加で国も自治体も学校への管理、注文が強まる一方です。しかし学校現場の創意工夫する意欲を摘み取ってしまって、子どもの豊かな心を育てることは不可能です。その意味で学校への地域支援体制づくりは極めて重要な視点です。

 外から規制する管理型から内面の豊かな心を育む、または引き出す内発型へ教育の視点を転換することが「徳育」に直結することを強く主張したいと思います。

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