西城市民病院(庄原市西城町)の認知症治療専門病棟閉鎖が決まった。病棟は来年度、老人保健施設に転換し、新たな地域の高齢者対策を模索する。
県北で唯一の老人性認知症治療専門機関の閉鎖は残念でならない。同病院の精神科も、常勤医師だけでなく、非常勤医師も広島大病院に引き揚げ、後任が決まっていないため来春からは休診が予定されている。
医療費の増大が、国の財政を圧迫し、高齢者対策がここ十数年で「医療から介護へ、施設介護から自宅介護へ」と転換した。全国的な医師不足もあり、病棟の閉鎖は、国全体の流れから考えると、仕方のないことかもしれない。
ただ、西城地域は旧町時代から「医療と福祉の町」と呼ばれ、六十歳を過ぎた住民が「いつかは私も老いてゆくから」と、地域ぐるみで介護予防教室を開き、行政や病院と連携して高齢者の包括的ケアに積極的に取り組んできた。それでもなお、認知症患者はゼロにはならない。
「精神科は、地域や家族が、認知症に対してさまざまな取り組みを行って、それでも支えきれなくなった場合の最後の駆け込み寺なのに…」。市職員が口にした言葉が今も胸につかえている。
「安心・安全の国づくり」と国政の場でも盛んに語られるが、都市部との格差が広がる中山間地域では、その道筋が見えない。財政面だけでなく、地域特性も考慮したきめ細かな医療制度改革を求めたい。(戸田剛就)
【写真説明】来年度から老人保健施設に転換される認知症治療専門病棟。重度の認知症患者の転院が進んでいる
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