救急業務の公平性と公正性を確保する狙いで、横浜市は12月25日、119番通報時に患者の緊急度に応じて救急車の出動を判定する「トリアージ」の導入や、虚偽の通報や悪質な救急車の利用に対する罰則適用も盛り込んだ「横浜市救急条例」を公布した。施行は来年10月1日。
同市では、少子高齢化や核家族化などの影響により、救急件数が人口増を上回る勢いで増加している。救急車の出動要請は年16万件にも上る。しかし、要請のうち、結果的に軽症であった件数が全体の約60%を占めていること、また現場から最も近い救急隊が出場中のため、より遠い救急隊が対応した事例が全体の40%に上ることなどから、市は「公正で公平な救急業務が確保できていない」と判断。救命率の向上を目指し、市は条例案を市議会に提出。12月21日に本会議で可決・成立、25日に公布された。
同条例の柱は119番通報時のトリアージ。5年に及ぶ研究の末にシステムを完成させた。同様のものは欧米各国ではすでに用いられているが、日本では初の試みとなる。
具体的には、通報を受けた消防指令センターの職員が、通報者から聞いた意識程度や出血・損傷程度などをコンピュータに入力し、緊急度・重症度の高低を判定。通報の最中にも救急車1台に出場指令を出せるため、識別による遅れは回避できるという。
また、救急車の出動の必要がないと判定された場合、電話による医師や看護師の「救急相談サービス」が受けられ、適切なアドバイスや医療機関の情報などを取得できる。
さらに条例では、虚偽の通報や救急車をタクシー代わりとするような不正利用について、罰則の適用も視野に入れながら対処する旨を明記。同市の担当職員は「条例が市民のモラルに訴えるものであることを期待する」と話す。
このほか、百貨店や駅舎といった大型施設に自動体外式除細動器(AED)などの救急資材の設置も義務化。これについての施行は09年の4月1日となっている。
更新:2007/12/26 キャリアブレイン
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