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社説:NHK新会長 公共放送の持つ使命は重い

 NHKの次期会長にアサヒビール相談役の福地茂雄氏の就任が決まった。会長人事を決定する経営委員会は、12人の委員のうち会長任命に必要な9人を上回る10人が賛成した。しかし、古森重隆委員長(富士フイルムホールディングス社長)の運営が強引だとして、2委員が会見を開いて批判するなど、異例の経過をたどった。

 次期会長について古森委員長は、現執行部の中からは選ばないことにした。9月に現執行部が示した経営計画案は、抜本的改革にほど遠いとして、外部登用の方針を示した。

 しかし、外部からの人選は難航した。04年の不祥事発覚以来、世論の批判を浴び続け、国会で答弁しなければならない会長は荷が重い職務だ。戦後初めての受信料値下げという局面を迎えていることもあり、就任を要請した財界人からはことごとく断られたという。

 古森委員長と福地氏はともに長崎に縁があり、アメリカンフットボールなどを通じて親交があったという。その縁から会長就任を依頼したようだ。

 しかし、これでは公共放送のトップを「お友達」の中から選んだことになる。福地氏を他の委員に引き合わせたのが25日午前で、同日午後に採決で決めるという手法も含め、批判を浴びるのは仕方がない。

 古森氏がNHKの経営委員長に就任したのは、安倍晋三前首相を囲む財界人の会のメンバーだったことが影響している。そして、安倍政権時には、総務相を務めた菅義偉氏と、NHK執行部が対立した。

 受信料の2割引き下げを迫ったり、命令放送の実施など菅氏の手法は強引で、ぎくしゃくした関係が続いたが、安倍政権が終わったにもかかわらず、NHKをめぐっては、安倍政権時の確執の構図がそのまま続いているように映る。

 「選挙期間中の放送については、歴史ものなど微妙な政治問題に結びつく可能性もあるため、いつも以上にご注意願いたい」「NHKの番組はあまり見ていない」など、古森委員長の発言は波紋を呼んだ。

 成立した改正放送法で、経営委がNHKの個別の番組編集に介入することを禁じる条項が盛り込まれたのは、皮肉だ。

 不祥事の根絶、受信料引き下げ、不払い・未契約の解消、チャンネルの削減、肥大化した関連会社など、NHKには課題が山積している。20年ぶりの外部からの会長就任で、NHK改革が抜本的に進むことを期待したい。

 しかし、今回の会長人事をめぐっては、水面下で激しい駆け引きが展開された。当然、しこりが残るだろう。

 NHKは報道機関でもあり、公共放送として重い使命を担っている。NHK内部の意思疎通が滞り、運営が混乱すれば、視聴者は迷惑するばかりだ。

毎日新聞 2007年12月26日 0時17分

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