松本電鉄(松本市・滝沢徹社長)を中核に県内で運輸、観光、小売事業などを展開するアルピコグループは25日、メーンバンクの八十二銀行(長野市)に対し「私的整理に関するガイドライン」に基づく該当19社の再生支援を要請したと発表した。同行など金融8機関との合意による債権放棄を軸に、約182億円の債務超過(9月末現在)の解消を図り、組織合理化など抜本的再生計画を進める。八十二銀行は要請を受け入れ、金融支援を行う方針。
支援要請したのは、親会社の松本電鉄ほかアップルランド、アルピコタクシーなどグループ全般。諏訪地方では諏訪バス(茅野市・牛山邦友社長)、東洋観光事業(同・小林正造社長)、諏訪湖ロイヤルホテル(諏訪市・上条潔社長)が含まれる。
19社の債権は計約284億円で、東洋観光事業が77億円、松本電鉄が63億円、アップルランドが56億円。その他グループ16社で計87億円。
アルピコグループはガイドライン手続きに沿って、25日付で各金融機関へ借入金など返済の一時停止を通知した上、再生計画の骨子を提示。年明けの債権者会議を経て来春までに計画を実現させ、松本電鉄の現常勤役員が退任、グループ持株会社方式の新体制へ移行する予定。
八十二銀行は他の金融機関の同意を条件に支援し、85億円の債務免除と30億円の債務株式化を行う。国内系投資ファンドのリサ・パートナーズも25億円を新規出資し、財務基盤強化をサポートする。
グループ再生計画によると、主力事業のスーパーは従来通り不採算店舗閉鎖、新規開店の経営スタイルを継続。交通事業はグループ各社の統合を見込むが、当面は各路線を維持する。
◆多額投資で経営悪化
アルピコグループは、鉄道を皮切りに、1960年代以降は全県店舗型のスーパー、レジャーなど幅広い事業を実施。県内有数の企業グループとして成長する一方で、多角化に伴うホテル、ゴルフ場などへの多額投資から低収益、有利子負債による経営悪化を招いた。
今期から松本電鉄を親会社として実質的な収益や資産状況の洗い直しを進め、10月には白樺湖ロイヤルスキー場、白樺湖ロイヤルホテル(茅野市北山)を株式売却するなど合理化を図ったが、現状打開に至らなかった。
松本電鉄は同日夜、会見を開き経過を説明。滝沢社長は「多額投資はもちろん、グループとしての組織的な経営手法も確保できず、抜本対策を先送りにしたのが原因」とし「スムーズに計画を運び、地域の信頼を取り戻したい」と話した。